証言 沖縄「集団自決」

証言 沖縄「集団自決」―慶良間諸島で何が起きたか (岩波新書)

証言 沖縄「集団自決」―慶良間諸島で何が起きたか (岩波新書)

 今年3月、大江健三郎岩波書店沖縄裁判の大阪地裁の判決が出され、裁判所は集団自決に対する日本軍の関与を認めた。歴史教科書の検定では、文部科学省はこの裁判を口実に、歴史教科書から沖縄戦のいわゆる「集団自決」について、軍の関与を削除した。
 沖縄ではこのことに抗議して昨年10月1日に、11万人の抗議集会がひらかれた。昨年10月10日の徳島新聞社説でも、「それまでの教科書検定では、集団自決が日本軍の強制によるものとの記述を認めてきた。それにもかかわらず、今回の検定でいきなり、『強制』の削除を求めたことに無理があったのではないか。沖縄県民が反発したのは当然である。」と指摘している。
 本書は、凄惨な戦争の生存者たちが、歴史を書き換えようという動きに抗って、当時の実相や現在の思いを証言している。「集団自決」というと、住民の意思で自決したと感じるが、実際は軍の強制による「強制集団死」であったことが理解される。軍隊が存在することがいかに残酷なことを生じさせるか、憲法9条の存在意義が理解される本である。裁判の元になった大江健三郎の「沖縄ノート」も再刊された(岩波新書)。