戦争法案と義父の歌集「光十字に」

 戦争法案が大詰めに来ている。その成立を阻止して子や孫に平和な次代を引き継ぐのは私たちの役目。全国で反対運動が渦巻いている。
 義父は1921年11月生まれ。2006年1月1日に突然亡くなった。義父については、私の最初の自費出版「孺子の牛」の冒頭の一文「1.光十字に」(2004年8月10日)と「38.正月早々の葬式」(2006年1月16日)で触れた。義父は、義母が亡くなってからは農業のかたわら、短歌制作と墨絵を趣味として暮らしていた。我が家からは200mほどしか離れていない家に、義弟夫婦たちと仲良く暮らしていた。1921年生まれでもわかる通り、一兵卒として戦争に行っていた。日中事変から太平洋戦争敗戦までの5年間、中国で青春を過ごさなければならなかった。
 その義父が歌集を出すということで、私が若いころ出版社に勤めていたので、その編集の手伝いをした。歌集「光十字に」(2004年6月25日発行)である。義父は、日頃は戦争の話はあまりしなかったが、歌集を見るとその冒頭には「戦陣抄」として105首、「復員」として24首が掲載されている。冒頭に戦陣抄を置いたのは、義父にとって従軍した戦争が、彼の人生に大きな比重をしめていた証だと私は思う。
 戦陣抄の最初は、
 ◯出征に万歳歓呼で送られし村長の言葉耳底にあり
 最後の歌は
 ◯戦争はすべきに非ず人をして鬼となさしむ兵も将も
 「復員」の最初と最後の歌は、
 ◯髭面と垢にまみれて帰りたる戦地の土産は虱にてありき
 ◯あと幾許余生あるかは知れねども中支の戦友(とも)よ永遠に幸あれ
 私の長女が大学に合格した時の歌
 ◯うわずれる電話の向こうの孫の声皆まで聞かず合格を知る
 歌集の最後の歌は、
 ◯防犯灯の光十字に煌(きらめ)きて星一つなき魔界を制す
 これから安倍内閣が認めようとしている戦争は、ここに書かれているようなものではない。はるかに残虐で破壊的で瞬時に命を奪われ、全く人間性を喪失させるものである。
 安倍内閣が創りだそうとしている「魔界」を義父の生き様が照らしていると思う。
 短冊・色紙にもしている。
 
 最初の歌は、
 「没有法子香煙進上」と処刑をうく八路の兵の肝太かりし
 中国語の部分には「メイユ ファズ シアンイエン シンジョ とルビを振っている。どうしようもない たばこをくれ という意味である。
 

台北陵クリニック筋弛緩剤えん罪事件の守大助さんをご支援ください!
B型肝炎訴訟をお考えの方は、全国B型肝炎訴訟弁護団へご相談を!


鶴彬の現代仮名遣い版全川柳(木村哲也編 邑書林 2007年12月)
◯仏さまと呼べど答えなし
◯咽喉(のど)の奥にうそをためてる
◯一銭では不服か老巡礼の瞳(め)