戦場に舞ったビラ

 副題は「伝単で読み直す太平洋戦争」講談社 選書 メチエ 1,700円 一ノ瀬俊也著
 戦争では、直接的な闘いだけでなく、情報戦も重要になってくる。相手の意識をどう導くかが、勝敗に一定の役割を果たす。
 この本では、主に日米のビラを比較して、それが兵士・住民にどのような影響を与えたか、検証している。著者は、ビラの内容を吟味して、また後日それらがどう読まれたか丹念に調べている。下級将校達が戦後に書いた戦争体験記などから、ビラが果たした役割を明らかにしている。
 著書の終わりに「皮肉といえば、多くの日本兵が、味方ではなく敵の撒いた伝単によって、敗戦を知らされたことも皮肉である。その意味では『敗戦の日』は8月15日や9月2日とはかぎらず、人それぞれということになる。粛々と戦争は終わったのではない。『敗戦』の日をだれかが後から決めてしまうことは、国家の引き起こす戦争が個人に引き起こす混乱は、あまりに多様であり深いということを忘却させてしまう」
 この本で紹介されたビラを見ると、道理のない戦争だったことが知らされる。「孺子の牛」の「燦たり皇軍!厳たり銃後!」にも書いたが、全く無謀は戦争であった。
 その過ちをまた、「憲法9条」を変えることで、違ったかたちで歩みだそうとしている。
 著者には「明治・大正・昭和 軍隊マニュアル」(光文社新書 2004年)あり、以前購入しているので、読み始めたところだ。
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