風俗画報


 先日、古書店モウラで購入したのが、この雑誌である。「風俗画報」第158号 明治31年2月10日刊。表紙は、この季節に合わせて、節分の豆まきの図である。A4よりやや小ぶりのサイズで、40ページほど。なにしろ、1898年のもので今から110年も経っているものだから、ページをめくっていると、次第に破けてくる。慎重に扱う必要がある。
 最初のページには論説「国家の元気」と題して大田才次郎という人が書いている。「然らば、この気は、有形上にのも存するものか。曰く、しからず。彼の無形上の関係より成立するところの国家においても亦存在せるなり。然れどもこの気は、草木にありては草木の気となり、動物にありては動物の気となるがごとく。国各々その気をこととし、家各々その気をことにせり。故に我が国の元気は我が国の元気にして、イギリス国の元気と同じからず」などと書いている。
 明治の文明開化の弊害について憂慮しているのだろうか。
 そのほか、各地の節分風景、武家の笑い話、各地の方言(和歌山・北海道・庄内)、各地の手まり唄、女性の化粧(女子愛嬌都風俗化粧傅)など、楽しそうな記事がいっぱいである。
 和歌山市の方言を紹介しよう。
 テッサン(亭主)・ゴッサン(ご新造)・イタン(お嬢さん)・オバン(おばさん)・オナゴシ(女衆)・オンバ(乳母)・シブツタ(吝嗇家・吝)・オクジマ(売春婦)・オハチ(米びつ)・テンゴ(賭博)・ホタエル(戯れる)・ホンマ(真実)・シシ(小児の小便)・スジ(悪疾にて家系のよごれたる)・ドコタリ(どこらあたり)・ヨンベ(昨夜)
 今でも使っている言葉もあるのだろう。