夏風邪

 土曜日の夜からどうものどの調子がおかしい。おまけに舌もおかしくなって食事が不味い。夏風邪にかかってしまった。毎晩、蒸し暑く寝苦しい。
 「731 石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く」をようやく読み終えた。

731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く (新潮文庫)

731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く (新潮文庫)

 この本は、2005年8月に新潮社から出版されたものが文庫化されたものである。戦時中、日本軍は中国で細菌戦を行っていた。そして、何千人もの中国人などを対象に人体実験を行ってきた。生きている人にペストなどの細菌を注射し、その病状を観察したり、実際に細菌を散布してその効果を調査した。
 敗戦直後に、責任者の石井四郎は、731部隊の施設を破壊して、国際法上も認められていない細菌戦の実態を隠そうとした。
 戦後、石井四郎はアメリカと取引をして、自分と石井部隊の関係者が戦犯として囚われることを逃れた。マッカーサーは石井部隊の資料を得ようとして、彼らの戦争犯罪を闇に葬った。アメリカは、石井部隊の肝心の人体実験の資料得るために、彼らの安全を保障する条件を提示して、その条件を飲み込ませて、報告書を書かせた。条件は以下のとおり。
1.この秘密調査報告書の閲覧はフェル博士、マックェール中佐、および吉橋通訳とGHQのアメリカ人、そして石井と約20名の研究者のみに限定される。
2.日本人研究者は戦犯の訴追から絶対的な保護を受けることになる。
3.報告はロシア人に対しては全く秘密にされ、アメリカ人のみに提供される。
4.ソ連の訴追およびそのような(戦犯を問う)行動に対しては、絶対的な保護を受けるものである。
5.報告書は公表されない。
6.研究者はアメリカ合衆国の保護下にあるという事実が明らかにされないよう注意が払われる。
7.主要な研究者は米国に行くことを許可される。
8.細菌戦実験室が作られ、必要な経費が支給される。しかし、アメリカ人実験室長の下に行われる日本人研究者との共同研究はさらに考慮される。研究に基づく特別実験が予定される。
9.アメリカ人だけによる全面的な共同研究は日本の問題に良い影響を与える。
 アメリカ人とこれらの条件を決定するに当たり、8以外はすべてのアメリカ人の一般的意図に基づく。

 アメリカはこうも考えていた。「米国にとって、日本の細菌戦データの価値は、”戦犯”訴追より、国家の安全保障として、はるかに重要である。
 国家の安全保障のために、日本の細菌戦専門家を”戦犯”にかけて、彼らの情報を他国が入手できるようにすることは得策ではない。
 日本人から入手した細菌戦の情報は、諜報チャンネルに留め置くべきで、”戦犯”の証拠として使用すべきでない。」

 薬害肝炎が日本の医療行政・薬事行政の大きな問題になっているが、製薬会社の旧ミドリ十字の創設者は、731部隊の中心的人物で、研究者も731部隊の関係者が多くいた。多くの人を人体実験しながら、自己の命を守るためにアメリカと取引をした人たちが作った企業が、患者の立場に立った医薬品が作れるはずがない。利益第一主義の企業姿勢が多くの薬害肝炎患者を生み出したのである。戦争犯罪をきちんと裁かなかったツケが、弱者に回される社会は正さなければならない。