木曽駒ヶ岳


 8月8日の夜に徳島を出発して、木曽駒ヶ岳(2956m)を目指した。今回の参加者は、W石氏・Y本氏・M野氏と私たち夫婦であった。9日の早朝から駒ケ岳ロープウエイに乗って、しらび平駅から一気に950mも高度を稼いで2612mの千畳敷に到着して登山開始。しかし、調子が悪い。生あくびが出て足が上がらない。寝不足と夏風邪の後遺症で、軽い高山病にかかったようだ。それでも何とか8時過ぎに山頂に到着。その日は10時過ぎに宝剣山荘に戻って、早速ビールで乾杯。
 10日は4時過ぎから宝剣岳(2931m)に挑戦。山荘のすぐ前にあるが岩場とクサリの連続で、登山初心者にとってはスリルがあった。そこですぐに下山する予定が、W石リーダーの発案で、三ノ沢岳に回ることになった。6時に遭難の碑がある分岐を出発して、1時間50分かかってようやく到着。W石リーダーはさっさと行って、1時間20分で到着したとのこと。帰りはもと来た道を引き返し、極楽平を経て千畳敷に下りてきた。菅の台に戻って早太郎温泉の「こまくさの湯」で疲れを取った。
 この日は駒ヶ根にある娘の家で宿泊。再会を祝って皆で乾杯。おいしい酒であった。翌朝、私たち夫婦を置いてW石氏らは帰徳。その後は、毎日娘の家の草とリ。虫にかまれて足が腫れて大変だった。それでも、12日はしらびそ高原に娘が案内してくれた。あいにくの天気で、南アルプスがきれいに見えなかったのは残念であった。昨日、疲労困憊して徳島に戻ったのであった。写真は木曽駒ケ岳
 
 しらびそ高原の帰りに喬木村(たかぎむら)にある椋鳩十の記念館に寄った。彼の作品は、今でも教科書に掲載されているのだろうか。以下は、村のホームページの紹介である。
椋 鳩十(むく はとじゅう)
「本名・久保田彦穂は、明治38年(1905年)本村の阿島に生まれました。 法政大学卒業後、鹿児島県に教員として赴任してから作家活動を始めました。 戦後、鹿児島県立図書館長となり、「片耳の大鹿」、「孤島の野犬」など新作を次々と 発表。戦時中に命の尊さと勇気や友情を訴えた作品は高く評価され、全国の小中学校の 教科書に採用されている作品は数多く、その作品は海外でも高く評価されました。ま た、「母と子の20分間読書運動」を展開するなど、図書館活動、文化活動にも大きく 貢献しました。(昭和62年没)」
 図書館に併設されている記念館には、夏休みなので子ども達が沢山来ている。図書館の入り口に村名の由来が書かれていた。出典は中国の古典詩集(日本で言えば万葉集にあたるのか)「詩経」だというのだ。村の封筒に由来の詩の一部が印刷されていた。「本村は、明治8年に喬木村として発足以来120余年。『幽谷より出て喬木に遷る(詩経)』より命名された村名に責任と誇りを持ちながら、今日まで歳月を重ねてまいりました。」
 東洋文庫平凡社)の第518巻に「詩経国風」があり、著者の白川静は「詩経は、西周後期の夷王・窅王の際から、春秋中期、秦の穆公の没する時(前840〜前621)に及ぶ約200年と、その前後にわたる中国の古代歌謡である」と紹介している。
 同じく東洋文庫第635巻に「詩経雅頌1」が白川静の訳注であり、「伐木」が掲載されている。原詩は3章36句あるが、村の紹介では最初の6句が書かれている。

 伐木丁丁  木を伐ること 丁丁たり  たんたんと 木を伐る
 鳥鳴嚶嚶  鳥鳴くこと 嚶(あうあう)たり  あうあうと 鳥は鳴く
 出自幽谷  幽谷より出でて      深き谷間より
 遷于喬木  喬木に遷る        高き木の枝に
 嚶其鳴矣  嚶として其れ鳴く     あうと引き鳴くは
 求其友聲  其の友を求むる聲     友よぶ聲ぞ
 相彼鳥矣  彼の鳥を相(み)るに   かの鳥すらも
 猶求友聲  猶(な)ほ友を求むる聲あり 友求むるに
 矧伊人矣  矧(いわんや)これ人なるに ましてや人の
 不求友生  友生(ゆうせい)を求めざらむや 友を求めざる
 神之聽之  神の聽こしめさば     神の聞こしめさば
 終和且平  終(すで)に和し且つ平らかならむ かくて安らぎたまふべし

 この詩は、饗宴の詩である。白川静の説明では、「祭事後の饗宴と、その饗宴が同族和合の意味をもつことを教戒する。教訓詩としての性格を持つ。」としている。

詩経雅頌〈1〉 (東洋文庫)

詩経雅頌〈1〉 (東洋文庫)

 もう少し解りやすい訳詩がネットにあったので全文を紹介する。

 威勢良く木を切ると
 響きあう鳥たちの声
 深い谷間から
 高い木へと舞う
 その鳴き声は
 友を呼ぶ声だ
 あの鳥でさえ
 友を呼ぶ
 まして人ならば
 友を呼ばないことがあろうか
 神霊もこれを聞き
 我らにはやすらぎがあろう


 威勢良く木を切る
 良い酒ができた
 良い子羊もある
 これで皆を招こう
 たとえ来られなくても
 我を忘れるなかれ
 廷内を掃き清め
 器を並べたて
 皆を招こう
 たとえ来られなくても
 我をとがめるなかれ

 
 木を阪(おか)に切る
 良い酒がたくさん
 料理もたくさん
 一族がここに揃った
 人の争いというものは
 食べ物のように
 ささいな事から起こるもの
 酒あれば良い酒を飲み
 酒無くば一夜醸した酒を飲み
 楽しく楽器を打ち鳴らし
 楽しく踊ろうではないか
 忙しくはない今のうち
 この酒を楽しもう