戦争がつくる女性像

 この本は、1995年に筑摩書房から出版された本の文庫版である。主に「主婦の友」が取上げられている。
 主婦の友は今年5月に休刊となった。主婦の友社のホームページでは、休刊についてこう紹介している。

『『主婦の友』休刊のごあいさつ
 大正6年の創刊以来、91年間にわたり、たくさんの方々に愛していただいた『主婦の友』は、今号をもって休刊いたします。

 91年というのは、人間でも相当な長命ですが、雑誌の場合、それ以上に驚異的な長寿といえます。戦前に創刊された雑誌で現在もつづいているものは、もはや数えるほどしかありません。

 それだけに、昔から『主婦の友』に親しまれた方も多く、今年2月半ば、ニュースで『主婦の友』の休刊がとりあげられて以来、全国のみなさまから、休刊を惜しむお便りやお電話をたくさんいただきました。なかには、ぼろぼろになるまで読み、たいせつにとっておいたという戦前の『主婦の友』のコピーを送ってくださった方もいました。

 テレビもインターネットもない時代、実用記事だけでなく、娯楽や教養まで盛り込んだ文字通り婦人総合誌であった時代に、家庭を守る主婦にとって、『主婦の友』がいかに大きなものであったか、当時のバックナンバーの数々を読んで、あらためてそう思いました。

 平成5年(1993年)、いわゆる婦人誌から、暮らしに直結する生活応援誌に誌面刷新したあとも、毎日の生活を前向きに楽しむことのおもしろさ、家族を思う気持ちのたいせつさ、主婦として頑張ることのすばらしさを伝えつづけてまいりました。

 時代の空気も、女性の意識も、91年の間に大きく変化しましたが、「家庭の幸福と女性の地位の向上」という創業者・石川武美の掲げた理念のもと、それぞれの時代で、みなさまの暮らしのお役に立てたのではないかと自負しております。『主婦の友』は休刊しますが、これは、新たなスタートを切るための始まりだと、私は思っています。これからも、女性がより豊かに、より快適に、楽しい生活を送るための雑誌をお届けすることが、91年もの長い間支えてくださったみなさまへの恩返しです。

 ご愛読くださった全国のみなさま、誌面にご登場いただいたすべての方々、寄稿いただいた先生方、そして、カメラマン、ライター、デザイナーほか、お力添えをいただいたスタッフのみなさまに、心から御礼申し上げます。

 なお、新年特大号付録の「おかず家計簿」につきましては、長年お使いいただいているみなさまに、引き続きご愛用いただけますよう、今年秋に単品での発売を計画しております。

 最後にもう一度、ほんとうにありがとうございました。

平成20年5月1日
主婦の友』編集長
金塚方也』

 主婦の友は、戦前・戦後を通じて一番よく読まれた婦人雑誌であった。著者は、「第二次世界大戦中(1939年〜1945年)に、日本軍部が、女性を戦争システム(戦時体制)の中でどのような役割を果たすべきものとして位置づけていたか。また、その役割へと女性大集を動員するために、どのようなプロパガンダをおこなったかという問題を、戦時中に流布していたマスメディアにおけるイメージをとおしてあきらかにしよう」としている。
 多くの表紙絵に登場してくる女性の姿から、そのまま敗戦につながざるを得ない状況が浮かびでてくる。戦争においては、家父長制度の中で、女性は『「一旦緩急あれば」、女性は常に「強さ」が要請される。それは男性不在の際の家庭においてであり、同時に戦時である。その強さは限定を持っている。伝統的な男女枠内にとどまっており、この境界を侵さない事、」また、その強さは非常時においてはむしろ積極的に要求される。』としている。戦争は、女性の人格否定・権利否定の最たるものといえよう。
 どこの国でも、戦争中の女性の果たす役割は、「第一に『母性』(戦闘員を産みかつ育てること)である。第二に、補助的労働力となることである。第三に、それは戦争を応援する『チアリ−ダー』である。 と規定している。表紙絵からは『戦争に行け』と言い続けるチアリーダーの声が伝わってくる。