ジェンダーの社会学 入門
- 作者: 江原由美子,山田昌弘
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/04/24
- メディア: 単行本
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これを読んでいると、何気ない制度・慣習・表現の中にも、男女差別が見られるのである。当然、私もそれと無関係ではないが。差別意識が体に染み付いているといえよう。これは、男性だけでなく女性にも当てはまる。
著者は、「性別の社会性と多様性」のなかで、近年のジェンダー研究の特徴を、こう指摘している。「これら性別に関わる現象は、けっして自然にできあがっているものでなく、社会的に構築されているということを強調する点である。男らしさ、女らしさという規範だけでなく、自分がどの性に属するかという性自認や、どちらの性を性的対象として好むかという性的指向でさえも、遺伝的に決まっているものではなく、生育過程で身につけていくという説が有力である。もう一つは、複数の性別のレベル間の相互関係を問題にしている点である。」
女らしさ、男らしさについても作られたものであるという。「優しさ」「繊細さ」「優美さ」「愛嬌のよさ」「おとなしさ」「清潔好き」「世話好き」「器用さ」など、女らしさと考えられている(近年はそうでもないが)ものが、女性たちの「自立」を阻むものとして問題になっているという。なるほどと思う。戦後の高度経済成長が、男女の役割分担(男は外で働く、女は家で家事と育児)を強制し、女性差別を助長してきた。ところが少子高齢化・経済の大規模な変貌(終身雇用の崩壊と、派遣労働者の急増に見られる労働者の不安定雇用と賃金の低下)で男女の役割分担に変化をきたしてきたが、育児・介護などの制度が不十分でその変化に追いついて行けなくなっている。
本書は入門書なので、幅広い問題を取り扱っている。目次は以下の通り。①ジェンダーとは何か ②性別とは 「性」の多様性 ③「女」とは何か 他者としての女性 ④「男」とは何か 「男らしさ」の代償 ⑤専業主婦という存在 ⑥ゆらぐライフコース 少子化とジェンダー ⑦変わる出産、変わる生殖医療 ⑧男の子育て、女の子育て ⑨ゆらぐ日本型雇用 ⑩親密性とセクシュアリティ ⑪ジェンダー、セクシュアリティ、暴力 ⑫性の商品化 ⑬ケアとジェンダー ⑭セラピーとジェンダー ⑮ジェンダーと社会政策
著者は最後にこう指摘している。「以上のように、現代日本における政府や自治体のジェンダー政策は、国際社会の動向や地域住民の具体的な生活状況の動向にも関連する、非常に複合的・総合的な政策となってきている。こうしたジェンダー政策が、女性問題や男性問題などのジェンダー問題の解決に果たす役割は、非常に大きいと考えられる。 中略 たとえそうした感情や信念がどんなに変えにくいものだとしても、それにもかかわらず私たちは今、このジェンダー問題に、真正面から向き合うことを、要請されている。たとえこうした問題が、生き方や家族のあり方など、私たちが依拠している感情や信念自体を問い直すことを迫ってくるとしても、私たちは今、それを真っ向から受け止めなけらばならないのである。」