郭沫若展

 昨日は、連合いと岡山県立美術館で開催されている「郭沫若展」を見に行った。ついでに岡山市金山寺にある「招き猫美術館」も見学した。夏休みのせいか子ども連れが多かった。展示数が少なく、いささか期待外れであった。展示品の制作年代・製作地・材質などの説明が全くなかったのは、美術館と銘打っているにしては不親切かと思う。
 また、岡山シンフォニーホールにある丸善書店に立ち寄ったが、目当てのモノ・本がなかったのは残念であった。
 郭沫若(1892年生 1978年没)の略歴は「マサ子通信」を参照のこと。
 彼は魯迅1881年生 1936年没)とは少し年代が違うが、中国の文学革命に大きな貢献をしている。郭沫若展では彼の幼少時期から日本留学、文学革命での果たした役割、中国革命への参加、岡山とのかかわり、戦後の日中友好に果たした役割などがコンパクトに写真や書画で紹介されていた、しかし、彼の文学において果たした役割があまり紹介されていなかったのは残念である。彼の著作物の展示がほとんどないのは、展覧会としてはどうかなと思った。最近の人は、彼の名前はほとんど知らないだろう。
 そこで、我が家にある彼の著作を調べてみた。 一番まとまったものは平凡社東洋文庫に全部で7冊出版されている。東洋文庫6「則天武后・筑」。以下は彼の自伝である。東洋文庫101「私の幼年時代辛亥革命前後」郭沫若自伝1、東洋文庫126「黒猫・創造十年他」郭沫若自伝2、東洋文庫153「続創造十年他」郭沫若自伝3、東洋文庫178「北伐の途上で・海濤集他」郭沫若自伝4、東洋文庫199「続海濤集・帰去来」郭沫若自伝5、東洋文庫224「抗日戦回想録」郭沫若自伝6 「創造十年・続創造十年」は岩波文庫としても出版されていた。
 これ等の著作の多くは以前平凡社から「中国現代文学選集」全20巻に収録されていた。このほかに、岩波新書から「歴史小品」(1950年)があり、積読としては「郭沫若史劇全集」(1972年 全4巻 講談社)、「李白杜甫」(1972年 講談社)、「郭沫若詩集」(1972年 未来社)がある。
 「李白杜甫」の中を見ていたら、1973年3月31日の「図書新聞」の切抜きが出てきた。松浦友久先生の文章である。こう書いていた。「本書はまず伝統的な李杜比較論の一環として位置づけられる。 中略 ところで郭沫若の『李白杜甫』が一つの画期的な著作でありうるのは、同じくこの人間論的な論拠に立ちながら、まさにその故に杜甫のほうがより多く批判されねばならないとした点にある。 中略 最後に、翻訳について。端的に言って、本書の訳文は、日本語の限りではよくこなれているが、原文との関係では誤訳・省略・不統一など、問題点が極めて多い。とくに、全訳とされながらかなり多くの欠落部分を含むことは理解に苦しむ。」
 当時40歳前の新進気鋭の研究者の松浦先生の率直な文章は、読んでいて面白い。再度調べてみたら、この書評の全文は「松浦友久著作選Ⅳ」(研文出版)に収録されていた。

中国古典詩学への道 (松浦友久著作選)

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