言論統制

 以前、林扶美子の「戦線」について佐藤卓己京都大学)が「林扶美子の『報告報国』と朝日新聞の報道戦線」と題して解説していることを紹介した。彼が言論統制」という本を出している。新書版ではあるが430ページにもなる大冊である。

言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 (中公新書)

言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 (中公新書)

 「言論統制」は鈴木倉三を主人公として、彼の生涯を描いている。「戦線」の解説で佐藤は鈴木のことをこう紹介している。「戦後のジャーナリズム史では戦時言論統制の中心人物として悪名を一身に背負った『鈴木少佐』の記念すべきマス・メディア初登場である。『ペン部隊』陸軍班の世話係りだった鈴木少佐は、その後も林の取材にさまざまな便宜を図っている。『日本思想界の独裁者』と恐れられた鈴木倉三の実像、さらに林の『凍れる大地』筆禍事件(1940年)の真相については拙著『言論統制ー情報官・鈴木倉三と教育の国防国家』を参照いただきたい。」