嵐の5日間

朝鮮短篇小説選〈上〉 (岩波文庫)

朝鮮短篇小説選〈上〉 (岩波文庫)

 長女一家が、12月30日から1月3日まで正月を過ごしに来ていた。子供たち(3人)の元気な声に励まされた(?)5日間であった。
 「朝鮮短編小説選」上 岩波文庫1984年4月第1刷)
 朝鮮関係の本を読むのは、久しぶりである。30年近く前までは、中国・朝鮮関係の本を大分読んでいたのだが、大学卒業後は仕事関係・労働組合関係の本ばかり読んでいたので、長い間ご無沙汰していた。したがって、朝鮮現代文学は読んだことがない。
 朝鮮は、19世紀後半に西洋列強と外交関係を結び始めた。その頃の朝鮮は支配層である両班(ヤンバン 文班と武班に分かれている)技術や行政事務に携わる中人、一般民である平民、そして奴婢に分かれていた。
 明治維新(1868年)以後、欧米列強の仲間入りを目指した日本は、1875年には早くも朝鮮支配をめざし江華島事件を引き起こし、日朝修好条規(1876年 別名江華島条約)を結んだ。この条約によって、日本をはじめとする各国の侵略や干渉をもたらすきっかけとなった。日本にとっては、特に制限もなく朝鮮で略奪的な商行為ができるようになった。
 朝鮮支配を中国と争った日清戦争(1894年)に勝利した日本は、朝鮮支配の実権を握ることになる。1895年10月には日本の駐朝鮮公使が指令して、王妃・閔妃(明成皇后)を殺害する。
 さらに日露戦争(1904年)で朝鮮への支配権を確立する。当時の日本の閣議決定はおおよそ、以下の通りであった。
 「日本は勧告に対して、政治上・軍事上・保護の実権をおさめ、経済上、益々利権の発展をはかる。」(未来をひらく歴史 高文研 参照)
 そして、1910年の日韓併合に進んだ。
 この本のカバーには「朝鮮の近代文学は、日本の統治に反対して起こった三・一運動の年−1919年に始まる。上巻には、様々な文芸思潮が流入し、いわゆる傾向文学の時代へとすすむ1920年代〜1930年代前半の短編小説」が取上げられている。
 当時の朝鮮は農業が主だったから、題材もそれらがほとんどだ。日本の農民も貧しかった時期だが、朝鮮の場合はまだまだ封建的な支配が続いていた時期でもあったので、農民たちの生活の苦しさは並大抵のものではなかった。出口が見つからない農民の苦しさが描かれている短編が多い。