朝鮮短編小説選 (下)

朝鮮短篇小説選 下 (岩波文庫 赤 74-2)

朝鮮短篇小説選 下 (岩波文庫 赤 74-2)

 昨日・一昨日と風邪気味で、一日中炬燵のお守りをしていた。一昨日は守大助君を支援する徳島の会の役員会があったが、欠席した。今日は少しはよくなったようだ。
 朝鮮短編小説選には、19人の作家の22作品が掲載されていた。1920年代から1940年代(解放前)の作品である。上巻では伏字が多くあり、今では復元できない文章も多々見られた。それが、下巻では少なかったのは、それだけ日本による言論統制が厳しくなって、書き手も統制を回避しながら自己表現をせざるを得なかったためであろう。そうは言っても、作品的な完成度は下巻のほうが高い。
 19人中で、以前読んだことのある作家は、李箕永(蘇える大地)・韓雪野(歴史)・金史良(金史良作品集 1972年理論社・駑馬万里 1972年朝日新聞社)であった。19人の略歴を見ると、朝鮮解放後に北に行った人が何人かいる。しかし今の北朝鮮の有様を見ると、彼らが願った民族の自由・社会主義の実現と、いかに距離が隔たり、縁のないものになってしまったかという思いがする。
 日本にも北朝鮮と同じように世襲政治家の人達がいるが、そういう人達には国民の思いは実現できないだろう。なにせ、自分の権力の維持が一番大切なのだから。
 蔵書を調べてみたら、李恢成の本が7冊ほどあった。在日の彼の名は今ではほとんど聞かれない。1972年に「砧をうつ女」で芥川賞を受けたので、それをきっかけとして興味を持ったのか、今では思い出せない。
 それよりも同じ年に安宇植岩波新書から「金史良 その抵抗の生涯」を出している。
 金史良は1914年に平壌で生まれ、1932年に日本にわたり東大文学部に入学している。日本語で書かれた「光の中に」が芥川賞候補作になっている。相当な評価が与えられた作家であるが、朝鮮に帰り、その後抗日戦争に参加している。その時の作品が「駑馬万里」であった。1950年の朝鮮戦争中に、どこか知られないところで亡くなっている。
 朝鮮の文学で初めて読んだのは、許南麒の詩集「火縄銃のうた」(青木文庫)と古典文学の「春香伝」(岩波文庫)であった。
金史良―その抵抗の生涯 (1972年) (岩波新書)

金史良―その抵抗の生涯 (1972年) (岩波新書)

光の中に―金史良作品集 (講談社文芸文庫)

光の中に―金史良作品集 (講談社文芸文庫)