放蕩かっぽれ節

 作家の井上ひさしが肺がんで、今月9日に亡くなった。昨年10月に肺がんと診断されてから6ヶ月目であった。肺がんでは毎年6万人を越える人が亡くなっており、がんの中での死亡率は、男性では1位、女性は3位となっている。肺がんは自覚症状がわかりにくく、7割の人が手術もできなく手遅れになっているという。
 私の父も、肺がんが見つかって手術が出来ず、1年後に亡くなった。その年に私も気になったのでCT検査を受けたが、8ミリの癌が見つかって手術をした。今からもう12年も前になる。もちろん、自覚症状などはなかったし、煙草も吸わない。だれでも定期的な胸のCT検査が必要と思う。「9条の会」はまた貴重な人を失った。
 井上ひさしの本で我が家にあるのは「浅草鳥越あずま床」「馬喰八十八伝」「巷談辞典」「コメのはなし」「どうしてもコメの話」「シャンハイムーン」「四捨五入殺人事件」「腹鼓記」「新日本共産党宣言」(不破哲三との対談)であった。

放蕩かっぽれ節―山田洋次落語集 (ちくま文庫)

放蕩かっぽれ節―山田洋次落語集 (ちくま文庫)

 本書は山田洋次の落語集である。私も落語は好きで、CDで聞いたり本でも読んだりしている。寅さんの映画を見ても、落語的な寅さんの姿が見受けられる。創作落語5題が載せられているがどれも面白い。「真二つ」はブラックユーモアたっぷりの落語である。
 「私と落語」では、著者の落語好きがよくわかる。小学生の頃に、上中下三巻の落語全集を手に入れるため苦心、戦時中中国の旧満州で過ごした時の落語全集を手放さないための努力、日本に引き上げる時に手放さなくてはならなくなった時の悲しみなどの記述は、著者が本当に落語が好きで、その後の仕事にも反映していることがよくわかる。
 こう述べている。「私が映画を創っていく上で、日本人の生んだ秀れたリアリズム芸術である落語に、どれだけ多くを負うかはかり知れないのである。」