B型肝炎訴訟の早期全面解決をめざす集い

 2月3日〜4日に「B型肝炎訴訟の早期全面解決をめざす集い」が東京で開かれたので参加した。
 3日は、13時20分から首相官邸前で宣伝行動が行われた。そこでは政府の和解所見受け入れの姿勢を批判した。14時20分から「集い」が開かれ全国の原告団弁護団90名あまりが衆議院第2議員会館の第1会議室に集まった。
 まず、谷口原告団代表が挨拶を行った。また、この集いには国会議員・議員秘書20名あまりが参加し、各議員からは挨拶を受けた。
 佐藤弁護団長からは「現在の到達点と課題」が話された。政府の札幌地裁の和解所見受け入れに当たっての姿勢は、全く国の責任を放棄して、裁判所に下駄をあづけるものであり、集い参加者から批判された。発表された談話で細川厚労相は、「本日までに与野党の一定のご理解を得られたので、政府として『裁判所の見解』を受け入れることとし、今後は裁判所の仲介のもと、早期に『基本合意』に至れるよう、引き続き誠実に協議を進めていく」としている。
 政府は「裁判所の仲介」のもとに「基本合意」ができるようにしたいと言っているが、誠にまやかしの言い方である。私たち原告は「政治決断」せよと迫っている。裁判所は「法律」の範囲内でしか考え方を示すことができない。特に民法724条に規定する「20年を超える場合の除斥」の問題は、裁判所ではクリアできない。国が裁判所の仲介をもとにと主張すれば、当然慢性肝炎発症後20年を超える被害者は救済されないことになる。
 集いでは、この除斥機関に該当する被害者から、その被害の実態が報告された。「私たちを取り残さないで!!」というパンフを作成して、国の主張する「除斥期間」がいかに不当で、被害の実態に合わないのかを実証した。発病して19年の被害者は救済されるが、20年以上経過した被害者は救済されないという矛盾に、国は眼をつぶろうとしている。パンフでは「真の全員救済実現を!! 発症20年超の被害者を救済法の対象に」と題して、原告団弁護団は以下のように訴えている。


 札幌地方裁判所が示した基本合意案では、発症から20年を経過した被害者の問題が未解決で残されたままでした。国は、このようなケースは除斥期間であるから救済の対象に含めることはできないと主張しています。そうして、発症から20年以上苦しんできた被害者だけが和解から置き去りにされようとしています。
 今こそ、国民の付託を背負う立法の力で、長く苦しんできた被害者を救済法の対象にし、真の全員救済を実現しなければなりません。
 B型慢性肝炎は持続性且つ現在の医療では根治不可能な病気です。発症から20年以上が経過している被害者は、それだけ長く病気に苦しみ、差別偏見に苦しみ、経済的に苦しんだ被害者です。そして今現在も病気に苦しんでいます。そして被害者が感染原因すら分からないまま長く病気に苦しんできた理由は、国が感染の原因である杜撰な予防接種行政を放置し、隠蔽してきたことにあるのです。
 最高裁が、除斥期間の規定を適用しなかったことが、二度あります。一度目は平成10年の予防接種禍の事件、二度目は平成21年の殺人事件の遺族からの損害賠償請求の事案でした。いずれの事案でも、被害者の権利行使を妨げた加害者に除斥期間の適用を認めることが『著しく正義・公平の理念に反する』として、条理に基づき除斥期間の適用を認めませんでした。集団予防接種によるB型肝炎の事案で国の損害賠償責任について除斥期間の適用を認めることは、まさに『著しく正義・公平の理念に反する』ものです。
 除斥の被害者も裁判を続ければ勝訴するかもしれません。しかし、今後の裁判継続による解決を、長く苦しんできた被害者にさらに求めることは余りに残酷です。もし、現在のタイミングでの解決ができず、さらなる裁判闘争を続けた場合、今までの裁判の例から最高裁での判決まで10年を超えることが予想されます。これからさらに10年以上も、寄り孤独で長い戦いを続けさせることは、国として絶対に許されない対応です。
 行政機関においても司法機関において解決されずに残った問題を解決するには立法機関が、発症からの機関に関わりなく全ての被害者を救済法の対象とするしかありません。真の全面救済を実現することは、いまや、立法機関にしかできないことであり、同時に立法の責務でもあります。

 発症から20年以上を経過する被害者を救済の対象にし、真の全面救済を実現されるよう、ご尽力を強くお願いいたします。

 国は、基本合意をしてから立法と言っている。しかし、基本合意のなかに20年以上経過した被害者を含まないという国の姿勢では、決して国と原告の間に基本合意は成立できない。基本合意ができなければ、被害者はいつまでたっても救済されないことになる。原告団弁護団は、基本合意と立法を同時することを主張している。
 国も一応立法化には賛成しているので、原告は「B型肝被害者救済法(仮称)の骨子」をまとめている。その内容は、
1.国の加害責任の明確化、感染被害者に対する謝罪の真の表明、再発防止の約束、差別偏見の撲滅、感染被害者に対する支援(恒久対策)
2.予防接種における注射器の連続使用によりB型肝炎ウイルスに感染した者(2次感染者を含む)に対して給付金を支給する。
3.症状レベルに応じて以下の給付金を支給する。(給付金は省略)
4.生涯にわたり症状レベルが悪化した場合には追加給付金(差額)を支給する。
5.給付金の請求及び追加給付金の請求金の請求には要件該当を証する裁判上の和解(あるいは同一の効力を有するもの)を必要とする。
6.給付金の請求には期限を定めない。
7.除斥の適用はない。

 政府の現在の姿勢では、4.6.7項が問題になる。国が、これらの項目を真摯にクリアすることが求められている。

 2日間の行動では、民主党自民党公明党共産党社民党ヒアリングを持った。共産党との話で高橋議員は、「細川厚労相は、『本日までに与野党の一定のご理解を得られた』と言っているが、除斥期間の問題を含め、政府のスキーム(1月30日のブログで言及した)に賛成したと取られかねない。私たちは賛成していない。」と発言した。その通りで、政府のスキームについて私たちが受け入れたら、多くの被害者が救済の対象から除かれてしまう。


上の写真は自民党ヒアリング 挨拶する田村議員
 東京には、ロバート・ファン・ヒューリックの「雷鳴の夜]」を持参した。道観(中国道教の寺)で起こった殺人事件をでディー判事が、みごとな推理で解決する。

雷鳴の夜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

雷鳴の夜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)


上の写真は宮内フサ(1985年102歳で死去)作品 鯛車

俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
  ●秋は夜長し 訪ふ人もなし 明かしかねたる 今宵かな
  ●色に出さねど 我が身の恋は 袖の涙で 人が知る
  ●狩り場の鹿は 明日をも知らぬ 戯れ遊べ 夢の浮世に