怪の漢文力

怪の漢文力―中国古典の想像力 (中公文庫)

怪の漢文力―中国古典の想像力 (中公文庫)

 本書は、2007年8月に中央公論新社から「怪力乱神」と題して出版されたものを改題して文庫で再刊したもの。
 「まえがき」に論語の「子は怪力乱神を語らず」の一文をのせ、まず最初に解説している。
「怪」は、怪異。ミステリー。妖怪。奇譚。反対の概念は「常」。
「力」は、暴力。バイオレンス。血なまぐさい話。反対の概念は「徳」。
「乱」は、悖乱。反逆。乱倫。エログロ。反対の概念は「治」。
「神」は、神秘。超常現象。オカルト。魔法。反対の概念は「人」。
 そして、陳舜臣の「論語抄」の一文を以下のように引用している。「なお孔子が正式に語らなかったのは、塾での講義のときで、日常の会話ではけっこう怪力乱神を語ったでしょう。」
 しかし、著者(加藤徹)の話によるとそうでもない。論語の中にあるいくつかの文章でそれを証明している。とにかく、中国古典の中には「怪力乱神」題材にした文章がいくつも見られる。
 中国人の想像力は大したもので、現在につながるいろいろなものを生み出し、宇宙についても壮大な空想を描いている。
 著者は、「いにしえの怪力乱神の物語は、人類がいかに豊かな想像力をもつ動物であるかを、改めて教えてくれる。古代人は、宇宙の風の中で生きてきた。自分の体内や天地を貫いて流れる気を日々感じていた。日月星辰は現代よりもずっと近く、地上は異人や怪物たちでにぎわっていた。21世紀の今日、自然はなお混沌に満ちている。未知の病魔が、次々と人間に襲いかかる。人気(じんき)で汚染された大塊は、人類への復讐を準備している。今こそ私たちは、先祖から受け継いだ「妄想力」を、ふたたび奮い起こすときである。」と最後に記している。
 民主党政権も含め、国会議員のみなさんという現代の「異人」「怪物」は全く小粒になってしまって、党利党略にばかりに明けくれている。そんなことでは「国民」から「復讐」されますよと言いたい。



 上の写真は宮内フサ(1985年102歳で死去)作品 手ひねりの土人形


俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
  ○雨が降り出に 名が立ち初めて 雨は止めども 名は止まぬ
  ○此方思ふたら これ程痩せた 一重廻りが 三重ほどに
  ○声はすれども 姿は見えぬ 君は深山の 蟋蟀(きりぎりす)