B型肝炎訴訟 札幌地裁が第二次和解所見

 4月19日、札幌地裁から第二次和解所見が出された。昨日の報道によると、政府はこの所見を受け入れると言う。
 5月2日には、全国の原告団の役員会が開かれ、所見に対する態度を決める。19日に、原告団弁護団は、和解所見についての声明を発表した。所見の概要と、声明の内容は、以下のとおり。

所見の概要
①2次感染被害者(母子感染)についての認定基準=一般の1次感染者と同様の検査の提出か、母親と本人とのB型肝炎遺伝子検査(塩基配列検査)か、出産直後の検査等があれば被害者と認定すること、
②発症後20年以上経過している被害者については、300万円(但し現在の症状があるか核酸アナログ製剤・インターフェロン等の治療の証明がある人。それのない人は150万円)を和解金として支払うこと、
原告団全体に、団体加算金として5億円を支払うこと、
を骨子とする内容でした。


2011年4月19日
B型肝炎訴訟・第2次和解所見について
                        全国B型肝炎訴訟原告団
                        全国B型肝炎訴訟弁護団

1 本日、札幌地方裁判所は、B型肝炎訴訟について、和解に関する全体の所見(基本合意書案)を原告・被告に提示した。
 この基本合意案は、本年1月11日の第1次所見に加え、同所見で残された論点、すなわち、主として①予防接種によってB型肝炎に感染した被害者である母親からさらに母子感染をした二次被害者の取り扱い、②慢性肝炎発症後20年経過後に提訴した被害者の取り扱いを付加して示されたものである。
2 今回の新たな所見のうち、二次感染者に関する部分は、これまでの協議の結果をそれなりに反映したものである。
 しかし、慢性肝炎を発症してから提訴までに20年以上を経過した被害者の取り扱いについては、一定の救済を図っているものの、国の「除斥」の主張に引きずられ、私たちの求めてきた「差のない救済」からは大きく隔たっており、遺憾であると言わなければならない。
3 原告団弁護団としては、今後、さまざまな要素を考慮し、本日の裁判所の第2次所見を受け入れるかどうか、慎重に検討する所存である。
以上

 1月の和解所見から比べると、一定の前進はあるが、国が民法第724条の除斥期間の主張に固執して、発症から20年を超した被害者に対しての救済については、差別のない救済には至っていない。長く苦しんできた被害者を他の被害者と同等には救済しないという姿勢は、全く社会常識からは理解できない。法とは、社会常識から外れる行為について規制し社会で安心して暮らせるようにするものではないだろうか。国は、予防接種による注射器の使い回しという、危険な行為を承知しながら長年続けてきて、多くのB型肝炎患者を死に追いやり、家族にも苦しみを負わせたが、それでも発症して20年以上の被害者を救済しなくてもよいという非道理は許すことができない。



 上の写真は、宮内フサ(1985年102歳で死去)作品 エビ抱き 93歳


俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
  〇稀に逢(あふ)夜は 人目を忍び 語り尽くさん 我が思ひ
  〇雨の降る夜は 一味(ひとしほ)床し いつに愚かは なけれども
  〇夕べ夕べの その移り香は 君が袂の 由縁(ゆかり)とも