B型肝炎訴訟の基本合意成立と救援美術展

 昨日、B型肝炎訴訟でようやく政府と原告の間で基本合意がまとまった。28日には調印式が行われる。札幌地裁による2回にわたる和解所見を原告と国が受入れて、最終的な調整が行われてきたのがようやく合意を見たのだ。国・原告ともに昨年末合意に向けていたのが、国のかたくなな(主に厚労省財務省の官僚たちであろう)態度によって、その実現がされなかったのだ。
 以下に、全国B型肝炎訴訟原告団・全国B型肝炎訴訟弁護団による声明(B型肝炎訴訟・第23回和解協議について)が発表されたので掲載する。


     B型肝炎訴訟・第23回和解協議について

              2011年6月24日
              全国B型肝炎訴訟原告団
              全国B型肝炎訴訟弁護団
    
 本日、札幌地方裁判所の和解協議において、原告団弁護団と国との間で締結される基本合意の内容が確定された。
 この基本合意は、現在全国10地方裁判所に係属している訴訟事件及び今後提訴される同種事件を和解で解決するための基本的事項を定めるものである。
 基本合意書には、和解の手続き及び内容のほか、国が集団予防接種での注射器等の連続使用によって甚大なB型肝炎ウイルス感染被害を生じさせ、平成18年の最高裁判決を経て本訴訟に至った経緯等を述べたうえ、国が感染被害の発生等の責任を認めて謝罪をすること、加えて、国の恒久対策の実現等に向けての努力や真相究明と再発防止のための第三者機関の設置、さらに、原告団弁護団と国との間の継続的協議の場の設定に関する事項等が盛り込まれることになった。
 基本合意の内容が確定したことにより、来週の6月28日に私たちは国(厚生労働大臣)と基本合意を締結し、総理大臣とも面談して国からの謝罪を受ける運びとなった。
 昨年3月の和解勧告以来1年以上が経過してようやく基本合意締結に至るが、提訴後すでに16名の原告が亡くなっている。さらに、多くの感染被害者が提訴もできずに亡くなっている。このようなB型肝炎患者の悲惨な状況を踏まえ、国からの謝罪を受けないままに亡くなった被害者の無念にも十分思いをいたして、総理大臣及び厚生労働大臣には、心からの謝罪がなされることを期待するものである。
 他方、この間、国は本件被害回復のための財源確保策として増税論を流布しているが、過大な推計を基に増税が不可避であるかのように宣伝することは、国の加害者としての責任をあいまいにし、被害者と国民の間を離反させ、被害者をさらなる偏見と差別の危険にさらすものと言わなければならない。基本合意にあたって国がこのような議論を再び持ち出すことがないように強く申し入れるものである。
 ところで、基本合意の和解の内容、特に、無症候キャリア及び発症後20年以上経過して提訴した慢性肝炎患者に対する救済水準はまったく不十分なものである。私たちは重症患者の一刻も早い救済と全国の感染被害者の救済条件の早期確定のために苦渋の決断によりこの和解内容を受け入れたものである。
 本日の協議において、裁判長は、「救済である以上、被害者が生きていらっしゃるうちに救済を受けていただくことが肝要です。」と述べ、今後の個別和解の手続きが迅速に進むことを希望した。さらに基本合意はベストのものでないとし「救済の範囲、額、方法、とりわけ最後に除斥期間の問題が争点となりましたが、あらためて国会その他の場でご討議いただいて、より良い解決をいただければと思います。」との所感を述べた。これは、除斥期間という法律の規定を前提とした和解案を出さざるを得なかった裁判所も、私たちと同様の思いをもち、立法にあたっては、このような「限界」を乗り越えた救済内容を実現すべきであるとの考えを示したものである。
 私たちは、今回、基本合意が締結できることを歓迎し、引き続き個別和解の迅速な実現に全力を挙げる所存であるが、同時に、恒久対策の実現、真相究明と再発防止に尽力するとともに、さらに十分な被害救済の実現を目指して一層努力を続けるものである。

                       以上


 今後国は、この声明に書かれたことと基本合意の内容を誠実に実行してほしいと願う。また、B型肝炎訴訟に関わったわれわれも同様に実行されるよう今後も努力しなければ、提訴後に亡くなった原告や提訴することもできずに亡くなった被害者・遺族に対し禍根を残すことになるだろう。B型肝炎訴訟はまだまだ続くのである。今後も、一人でも多くの被害者が提訴できるよう援助することが求められている。
 7月2日には山口県の民医連薬剤師の集会で、私がB型肝炎訴訟について話すことになっている。少しでも多くの人にB型肝炎訴訟のことを知ってもらいたい。


 「救援美術展」が徳島市内で24日から26日まで開かれているので、昨日運営のお手伝いをした。救援美術展は、「えん罪の真実を知らせ、人権の回復を求めて裁判をたたかう人々を支援する目的で、全国各地で30年以上にわたって開かれてきた」もので100名を越える著名な美術家から提供された作品を展示・鑑賞し、募金に応じて希望の作品を譲り受けることができる美術展である。
 この日は、画家の石野泰之さん(徳島出身で現在群馬県渋川市在住)がこられて、希望者に色紙に似顔絵を描いてくれたので私もお願いした。1時間近くかけて丁寧に描いてくれた。また、長女が家を新築中なので記念に一点求めた。守大助さんのコーナーも作られ、支援の訴えを行った。支援する会への入会者も2名あった。


俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
  ◎面の憎さよ あのきりぎりす 思ひ切れきれ 切れと啼く
  ◎たとへ別れて 遠ざからうが 日々に思ひは 増すわいな
  ◎ままに成らねば 科(とが)無き神も 祈りよしなき 罪作り