B型肝炎訴訟基本合意成立

 28日の、国との和解のための会に参加して来た。とにかく、どこも熱くて大変だった。
 基本合意の内容はおおよそ下記の通り。(東京新聞6月29日付)
 ◎国はB型肝炎ウイルス感染被害の拡大を防止しなかった責任を認め被害者と遺族に謝罪。
 ◎和解手続き・内容は札幌地裁が示した和解案の通り。
 ◎国は肝炎患者への差別・偏見をなくすための啓発・広報やウイルス検査の推進、医療費助成に務める。
 ◎感染被害の真相究明を第三者機関で実施。
 ◎肝炎対策について、国は原告・弁護団と協議する場を設定。
 また、個別の賠償金は下記の通り。
 ●死亡・肝がん・重度の肝硬変  3600万円
 ●軽度の肝硬変  2500万円
 ●慢性肝炎  1250万円
 ●未発症の持続感染者  600万円
 ●発症・感染から20年以上経過した、慢性肝炎治療中 300万円
 ●発症・感染から20年以上経過した、慢性肝炎治癒 150万円
 ●発症・感染から20年以上経過した、未発症の持続感染者 50万円と将来の検査費用など

 もちろん、これだけの賠償金を貰っても、今までにかかった治療費などの経済的損害や精神的損害が賄われるものではない。被害者にとっていはこれからも治療は続くわけで、経済的にはすぐに底をついてしまうだろう。従って、基本合意に明記されたようにしっかりした恒久対策の確立が求められる。2008年からの原告727名の中16名が既に亡くなっている。国がいたずらに解決を長引かせた結果である。国の責任は重い。
 谷口原告団代表は、万感の思いで「今日まで苦しかったけれど、生きていてよかった」と語っていたが、いつ亡くなっても不思議でない原告がたくさんいる。 和解に当たって佐藤弁護団長は、①個別和解の迅速な実現 ②恒久対策の実現 ③真相究明と再発防止に尽力すること
 を挙げていたが、国がきちんと対応するよう求めていかなければならない。国は、被害者全員を救済すると3兆円もかかるとして、増税の必要性を言っているが、これは国が長年にわたりB型肝炎被害者を放置して来た結果である。しかも、基本合意ができたからと言って、被害者全員が救済されるわけではない、まず、被害の実態を裁判所に提訴し、認めてもらうことが必要になってくる。しかし、集団予防接種が1948年から義務化されて60年余りもたっており、証明できない被害者が圧倒的に多いだろう。しかも、東日本大震災により証拠となるカルテなどが無くなった人もいる。こういう人達を救済るるには、それらの人たちも納得できる恒久対策の確立が必要で、原告も国に自分たちの実体験から施策について意見を述べることが求められている。B型肝炎訴訟はまだまだ続くのである。厚労省の官僚も、心して取り組んでほしい。
 今まで彼らは、B型肝炎は50年もしたら無くなると考えていた。要するに、B型肝炎ウイルスの母子間ブロックが1986年に開始され、それ以後は母子感染がわずかになったので、新たに患者となる人が減った。つまり、今患者である人達は50年もたてば皆亡くなるから、それまで知らん顔をしていればよいと考えてきたわけだ。そして、申し訳程度の肝炎対策でお茶を濁してきた。これからは、こういうことを許さないで、きっちり厚労省が基本合意通りに施策を実行するよう監視することが必要と思う。原告団弁護団の新たな活動が始まる。
私たちに謝罪する菅首相の声には張りがなかった。連日の与野党の辞めろの声に疲れきっているのだろう。これでは困る。大震災からの早急な復旧を第一義的な課題にしてほしいと切実に思う。

 


写真一番上は、厚労省で基本合意
2番目は、首相官邸で思いを述べる小池大阪原告団共同代表
3番目の写真は謝罪する菅総理


俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
  ●死なば諸共 かせがば共に 乞食するとも 二人連れ
  ●いへば恨みが わしゃあるけれど いはぬ心を 察しやんせ
  ●何の因果で わしゃこのように むごいお前に 身を窶(やつ)す