B型肝炎医療講演会

 12日(土)は2時から大阪の御堂会館で「B型肝炎の病態と治療」という医療講演会があったので参加した。これは、B型肝炎訴訟に加わる原告と弁護士を対象に行われたものだ。
 講師は岡上武先生(大阪府済世会吹田病院院長)で、先生は昨年5月30日に徳島で行われた市民公開講座の「肝炎・肝がんはここまで治る!」でも講師を務め、「話題の肝疾患 C型肝炎の最新治療とNASHについて」と題して話をした。
 そこでは大要以下のとおりであった。「ウイルス性の肝炎だけでなく肥満による肝炎(NASH)が増えてきて、その原因追求と治療法の研究が始まってきていること、今年秋(昨年)にはC型肝炎治療に有効な薬が認可されること、4〜5年後には服薬で治せる薬ができるだろうという話もあった。少し、明るい話題であった。」
 今回は、対象がB型肝炎患者であるのでそこに限って話がされた。
 日本では、HBV持続感染者は約130万人〜150万人いる。HBVの遺伝子型はA〜Hまであり、日本ではCタイプが主体(70%程度)。
 1986年から始まった厚生労働省B型肝炎母子感染防止事業によって、95%以上で母子感染が予防され、小児期のHBs抗原陽性率は10分の1以下に減少した(事業開始前の0.26%が、9年後は0.024%に減少)。
 日本の4大肝疾患の患者数は、B型肝炎:130万人、C型肝炎:170〜200万人、アルコール性肝障害:250万人、非アルコール性脂肪性肝疾患:1,000万人以上。そして、非アルコール性脂肪性肝疾患のうち脂肪性肝疾患(NASH)で肝硬変、肝がんが増えいてきている。
 日本人に多いB型肝炎のCタイプは、肝硬変の進展度、肝がん発生率が高く、インターフェロン治療反応率は好くないとのことであった。B型肝炎の検査をする場合、HBV DNA(血中のHBV量を示す)が多い人は、肝硬変や肝がんに進展する率が高い。そう言う患者はキャリア―でも定期的(年に2回程度)検査をすることが必要。また同時に、HBs抗原量の測定も病期と進展リスクの評価にとって大事であるとの指摘があった。
 現在のB型肝炎の治療目標は、①最終目標はウイルス排除(HBs抗原消失、HBs抗体出現)であるが、その率は極めて低い。②持続的なウイルス増殖抑制による炎症抑制。にある。
 B型肝炎治療には、インターフェロン核酸アナログ製剤(ラミブジン、アデフォビル、エンテカビル)が使われている。
 また、現在治験中の薬ではテノホビルがあり、これは2〜3年後には保険薬として認可される。核酸アナログ製剤はもともとエイズ治療に使われてきた。長期間服用すると耐性が出現することがあるので医師と充分に相談して使用することが求められている。また、薬の服用する場合女性は妊娠を避けることが求められている。大変、厄介な薬である。男性の場合は大丈夫との話であった。
 「B型慢性肝炎治療ガイドライン」があり、35歳未満とそれ以上では対応が違っている。このガイドラインも研究の進歩とともに変わってくるのだが、その進歩にどの肝臓専門医も追い付いているわけではないのが実情のようだ。きちんとした専門医を見つけることも、残念ながら患者の大きな仕事になっている。
 先生は、今の段階では肝硬変で死ぬことはないところまで来ている、あきらめないで治療を続けることが大事だと強調していた。
 そのほか、たくさん難しい話が出ていたが、省略。

 今回参加して意義がある感じたことは、この医療講演会が原告と弁護士を対象に行っていることだ。大阪弁護団を含む全国の弁護団では、このような医療講演会を各地で開催している。最新のB型肝炎治療の知見を得ることは、弁護活動にとって不可欠であると思う。
 最近、全国弁護団に加わらないで独自に弁護活動を行っているところがある。私が危惧するのは、そういう弁護士に依頼した場合、国からの不当な資料提出に対し、科学的な見地から反論できず、本来救済できる被害者を救済できず、むしろ現在のB型肝炎訴訟の国との到達点の内容の足を引っ張るようになるのではないかということだ。

 医療講演会の後、大阪原告団総会と懇親会があったので参加した。総会では大阪で開かれる6月2日の「基本合意1周年感謝の夕べ」や、東京で開かれる6月28日の「基本合意1周年記念集会」、7月28日の「世界・日本肝炎デー・フォーラム」、グループ討論での恒久対策活動などについて話し合った。



 
 我が家の張子面 狐 静岡:澤屋


俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
 ○櫻三月 菖蒲は五月 咲いて年とる 梅の花
 ○様と儂(わし)とは 山吹育ち 花は咲けども 実は生らぬ
 ○君は野に咲く 薊(あざみ)の花よ 見れば優しや 寄れば刺す