吉村昭「七十五度目の長崎行き」とB型肝炎訴訟原告S原さんの死

 今朝、我が家の庭を見ると、池に氷が薄く張っていた。今冬初めてである。それだけ厳しい寒さであったのだろう。メダカも金魚も動きが鈍い。寒さをこらえている。

 久しぶりに吉村昭を読んだ。我が家にある吉村作品は下の通りであった。ただし、「ふぉん・しいほるとの娘」は35年間積ん読のままである。

「日本医家伝」「冬の鷹」「虱と爆弾」「ふぉん・しいほるとの娘」「青い骨」「神々の沈黙」「消えた鼓動」「花渡る海」「白い航跡」「東京の下町」「七十五度目の長崎行き」

 これらを見ると、私の吉村作品は医療関係ばかり。以前の仕事が医療関係だったからである。東日本大震災のあと、吉村の「三陸海岸津波」という小説も再度読まれていると聞く。とにかく著者の旅行歴はすごい。取材が主であるが、そこで感じたこと、新たに発見したことが作品につながっている。
 吉村が八百屋の主人や、建設関係者や警察関係者に間違えられるところは微笑ましい。行く先々で、美味しいお酒と料理を楽しんでいる様子も書かれ、そんなところへ行ってみたい気をさせてくれる。小澤酒造直営の「ままごと屋」では、日本画川合玉堂の孫(小澤氏の夫人)のつくる「うの花入り」「梅花どうふ」「山ごぼう梅肉漬け」が紹介され、吟醸酒に菫の花が入っている酒を提供されたようだが、一度味わってみたいものだ。
 玉堂美術館には40数年前に行った記憶があるが、今も「ままごと屋」はあるのだろうか。といったところで近頃便利でしかも味気ないのが、ネットで調べることだ。調べてみるとそれがあった。
 会社のホームページには以下の紹介がされていた。

 株式会社澤乃井ままごと屋は、≪清酒澤乃井(小澤酒造)≫直営の料亭です。
 美酒・澤乃井を生む名水「岩清水」を使って作られた、「豆腐」や「ゆば」を中心とした各種の季節コース料理を、ご提供しております。また、この度、お客様からのお問い合わせ・ご要望を頂き、インターネットよりお豆腐商品のご注文を受け付ける事となりました。
http://www.mamagotoya102.com/U01corporate.html


 B型肝炎訴訟大阪原告の一人であるI島さんからメールが入り、九州原告のS原さんが亡くなったという。12月15日に札幌で行われた恒久対策会議には、病院から会場に駆けつけ参加された。傍から見ても体調がすごく悪いのがわかった。それでも肝炎の恒久対策を求めはるばる九州から札幌にやってきたのだ。大きな体で、厚労省前や首相官邸前でマイクを持ってゆったりと話すその姿は、九州原告団だけでなく全国原告団の一つのシンボルでもあった。
 12月24日の葬儀に参加したI島さんが以下のメールを送ってきた。

 東日本大震災のあと、4月頃の会議で和解案をどうするかという大事な場面で、彼は『重篤な患者のためにも一刻も早い解決を目指すべき』と発言しました。(その場面は私も覚えています)しかし、その時の和解要件では彼は対象外になってたのです。
 なのに、これ以上引き伸ばせないと、自ら強く意見しました。自分の事より仲間の全体を見据えて、いつも活動されていたんだと、本当に感謝します。
 その後のご本人と弁護団の努力て、昨年秋に和解できたそうです。それによって同じように対象外だった方々に道を開いた貢献もすごい。




我が家の絵馬  愛媛・宇和島  和霊神社  2003年8月25日購入
 これで、我が家の120点ほどある絵馬シリーズは終わり。次は大崎文仙堂(高松)の土人形にでもしようと思うのだが、まだデータにしていない。


どどいつ入門(中道風迅洞 1986年 徳間書店
○胸にあるだけ 言わせておくれ 主の言いわけ あとで聞く
○惚れてこがれた 甲斐ない今宵 逢えばくだらぬ ことばかり
○つねりや紫 食いつきや紅よ 色で固めた このからだ