香具師口上集

香具師口上集 (1982年)

香具師口上集 (1982年)

 この本は、古書店モウラで2年ほど前に、表題に惹かれて購入した。1982年に出版されているが、その後「続」が出され、1997年には再編集されて「新版」が出されている。新版にはCDが着いていて、口上を聞ける。著者は、表紙カバーの裏に自己紹介がされている。東京神田の生まれで、いろんな職業を経験して、作詞・浪曲まで作っている。
 小沢昭一が同じく表紙カバーの裏にこう書いている。「香具師(やし)は”ことばの手品師です”。その言葉の手練手管ーーーウリ文句、ノセ文句が集められた」
 この本では映画男はつらいよの「寅さん」についても触れている。「ところでこの映画は大きなミスを犯しているのである。編中の寅さんはテキ屋という設定だが、これが間違い。テキ屋に一匹狼はいない。親分から杯を貰って一家に入って群れの中で生きる。これが鉄則なのだ。なのにテキ屋ヅラして仁義のマネゴトでもしてご覧なさい。エイッとばから一刀か、はたまたパーンと一発か、朱に染まって敢え無くなっても苦情は絶対つけられない。いわば死に損撃てれ損、それがこの世界の不文律とうものだからうっかり仁義も切れやせん。」
 もっとも、監督の山田洋二はこんなことは知っての上での設定なのだろう。
 とにかく、口上のような文体がとても面白い。数の符牒も紹介している。僧侶と本屋の符牒は以下の通りである。一は大無人(大の字から人をとる) 二は天無人(天から人をとる) 三は王無人(王から棒をとる) 四は置無直(置に直がない) 五は吾無口(吾に口なし) 六は宍無冠(宍から冠をとる) 七は切無刀(刀がない) 八は穴無冠(八が残る) 九は鳩無鳥(鳥をとれば九が残る)
 昨日、守大助さんを支援する徳島の会の役員会があり参加した。毎週交代で、役員が守さんに手紙を書くことにしている。会の後、紀伊国屋書店に立ち寄った。絶版になった古書を売っていたので、林京子の本を探していたら、中公文庫にあった。「ミッシェルの口紅」「上海」があったので購入した。