清貧の思想

清貧の思想

清貧の思想

 中野孝次の本は初めて読む。この本は、文春文庫でも出版されている。彼はドイツ文学者で作家でもあるが、日本の古典にも詳しく、何冊か本を書いている。これも、中世・近世の文人たちを取り上げて、彼らの生き方に共鳴している。取り上げているのは、本阿弥光悦鴨長明良寛池大雅与謝蕪村・橘曙覧・松尾芭蕉西行吉田兼好である。「現世での生存は能うかぎり簡素にして心を風雅の世界に遊ばせることを、人間としての最も高尚な生き方とする文化の伝統」として、彼らを紹介している。それを「清貧を尊ぶ思想」として位置づけている。
 大学で学んだのは国文科だが、古典はほとんど読んだことがない。
 吉田兼好の「徒然草」の第123段を引用して、清貧の基準を示している。「思ふべし、人の身に止むことを得ずして営む所、第一に食ふ物、第二に着る物、第三に居る所なり。人間の大事、この三つに過ぎず。餓ゑず、寒からず、風雨に侵されずして、閑に過ぐすを楽しびとす。ただし、人皆病あり。病に冒されぬれば、その愁忍び難し。医療を忘るべからず。薬を加へて、四つの事、求め得ざるを貧しとす。この四つ、欠けざるを富めりとす。この四の外を求め営むを奢りとす。四つの事倹約ならば、誰の人か足らずとせん。」 倹約とはつつましいながら足りていればの意としている。
 なかなか、こういう意識にはなれないのが私たちではある。もっとも最近は、医療は国の政策によってまともに受けられないようになってしまった。小泉内閣構造改革路線による政治が、国民生活をめちゃくちゃにしてしまった。マスコミにあおられて、小泉内閣に熱狂的な支持を与えた国民の責任も重い。だからといって、麻生内閣に期待するものは全くないが。お坊ちゃまで生まれ育ってきて、庶民を蔑視する感覚の政権には国民生活を改善する気持ちもない。
 調べてみたら、中野孝次は大の犬好きで「ハラスのいた日々」という小説も書いている。これは映画にもなっていてテレビで見た事がある。
 高校(東京都立田園調布高校)の同窓会の案内状が来た。卒業して44年にもなる。前回の4年前は用事があって参加できなかったが、今回は参加しようと思う。