四国八十八ヶ所

 四国八十八ヶ所札所に関する本は、数え切れないぐらい出ている。徳島のどの書店に行っても、日常的に10数種類は店頭に並んでいる。先月9月に岩波新書から石川文洋の「四国八十八ヶ所」が出た。表紙カバーの裏の紹介はこうだ。「日本縦断徒歩の旅をやりとげた戦場カメラマンが、今度は四国遍路へ。それは、戦禍に巻き込まれた人々、とりわけベトナムカンボジアで斃れたジャーナリストらへの鎮魂の旅でもあった。途中、心筋梗塞に襲われつつも、危機をのりこえて結願を達成。生命の重さと向き合った日々を、四季の鮮やかな写真とともに伝える。」
 さりげない表情を見せる人物・景色を撮った写真が、ありきたりの四国霊場紹介で写真がふんだんに載せられた紹介物と違って、遍路道の有様を文・写真で語っているのがよい。ベトナムカンボジアで若くして亡くなったジャーナリストとのふれあいも挿入されていている。歩き遍路にはそれぞれ理由があって、苦しい1100キロもの長旅をする。先日、連合いと家の近くの8番札所の熊谷寺と9番札所の法輪寺を歩いていたら、若い女性の歩き遍路と話になった。鳥取から来ていると言う。今回は、高知市まで行くとのことである。以前より歩き遍路が多くなったように思う。連れ合いはお接待と言って、私の財布から500円を取り上げ、彼女に渡していた。地域・地域でいろんなお接待をしている。今、NHKで四元奈生美が歩いている。彼女の場合は、沢山の人のサポートがあるから安心であるが、他の人の場合はそうはかない。相当の覚悟が必要である。
 以前、徳島の九条の会石川文洋さんを呼んで、講演会を企画をした。ところが生憎な事に、石川さんが心筋梗塞で倒れた後のことで、呼ぶことが出来なかった。遍路の企画途中に心筋梗塞で心停止をして、ようやくの思いで生還した彼にとって、四国遍路は格別の想いがあっただろう。
 岩波新書からは「四国遍路」というのも以前出版された。読んだのだが、本棚に見当たらない。誰かが読もうと思って持ち出したのか。