伝説の日中文化サロン 上海・内山書店
- 作者: 太田尚樹
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2008/09/01
- メディア: 新書
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本の主人公は内山完造。本書の年譜によると内山は、1885年(明治18年)に岡山県後月郡芳井村(井原市か)の生まれ。いろんな職業を経た後、参天堂の社員となり上海に赴任。夫人が、1917年(大正6年)に内山書店を開いた。1930年(昭和4年)に仕事をやめて、書店の経営に専念している。上海は北京と並んで当時からも文化の中心地であった。内山書店には多くの日中の文化人が集まった。内山夫婦の分け隔てのない心遣いがそうさせた。そればかりでなく内山は、上海事変など、日中関係が悪化し日本と蒋介石の国民党政府からにらまれた多くの中国人を援助した。その代表的な人物が魯迅である。
魯迅と言うと「藤野先生」が有名である。この小説は日本の教科書でも紹介されている。魯迅が今の東北大学で医学を学んだ時に、大変影響を受けた人物で、魯迅は藤野先生の写真を書斎の机にいつまでも飾っていた。魯迅は「藤野先生」の最後にこう書いている。「夜ごと、仕事に倦んで怠けたくなるとき、仰いで灯火のなかに、彼の黒い、痩せた、今にも抑揚のひどい口調で語りだしそうな顔を眺めやると、たちまちにまた私は良心を発し、かつ勇気を加えられる。そこでタバコに一本火をつけ、再び『正人君子』の連中に深く憎まれる文字を書きつづけるのである。」(魯迅選集第巻 岩波書店)
藤野巖九郎の記念館が、福井県のあわら市にあり、何年か前に息子が在学中の金沢に行く途中に立ち寄った。魯迅と藤野の交流が展示されていた。ついでに福井市にある橘曙覧(幕末の歌人)の記念館にも行った。どちらもこじんまりとしてはいるが、満足のいくものであった。
魯迅の夫人である許広平は「魯迅回想録」
- 作者: 許広平,松井博光
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1968
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魯迅の息子の周海嬰は「わが父魯迅」
- 作者: 周海嬰,岸田登美子,樋口裕子,瀬川千秋
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/05
- メディア: 単行本
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1941年12月15日(太平洋戦争が始まった月)に許広平は日本軍憲兵に逮捕された。75日間の拘留の間に電気拷問などの虐待を受けた。詳細は「暗い夜の記録」に詳しい。
- 作者: 許広平,安藤彦太郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1955/09/20
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内山書店は、今でも東京神田のすずらん通りにある。
「内山完造伝」(小澤正元 番町書房 1972年3月 800円)という本もある。内山の著作で読んだものは「そんへえ・おおへえ 上海生活35年」(岩波新書 1949年9月 90円) 内山によると、そんへえは上海のおおへえは下海の上海読みだとのことである。 「平均有銭 中国の今昔」(同文館 1955年5月 150円) この二冊は古書店で購入したもの。
そんへえ・おおへえ―上海生活三十五年 (1950年) (岩波新書〈第16〉)
- 作者: 内山完造
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1950
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