ユタ

 「ユタ」については、フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』では以下のように記述されている。
琉球の信仰において、琉球王国が制定したシャーマンであるノロ(祝女)やツカサ(司)が公的な神事、祭事を司るのに対し、ユタは市井で生活し、一般人を相手に霊的アドバイスを行うことを生業とする、在野のシャーマン・巫(かんなぎ)である。

ユタはいわゆる霊能力者であるが、迷信と考える者も多い。だが、一般にユタの力は古くから広く信じられており、凶事に当たった場合や原因不明の病気、運勢を占いたいとき、冠婚葬祭の相談など、人が人知を超えると考える問題を解決したいときに利用される。こうした行為は「ユタ買い」といわれ、通常、ユタは相談料をもらって問題解決にあたる。たとえ霊的な効果はなかったとしても、信じる事で精神的な癒しを得られる事がある。そのため精神的に不安定な患者に対し、医者がユタを勧める例もあり(この場合、霊的な事を目的としている訳ではない)、沖縄県には「医者半分、ユタ半分」ということわざが古くからある。

ユタは単なる霊能力者ではなく、信仰上、自らを神と人間の介在者と位置づけており、広義にはノロやツカサなどと同じく「神人(かみんちゅ)」と呼ばれる。神に仕えるのは一般に女性と考えられており、ユタもノロやツカサと同じく、大多数が女性である。

後述するように、ユタは弾圧の歴史を持つことから、隠語として、ユタのことを三人相(サンジンゾー:易者)やムヌシリ(物知り)などと呼ぶこともある。

 広辞苑(第3版)によれば、ユタは「沖縄で、口寄せをする巫(かんなぎ)。男にも女にもいう。」

沖永良部島のユタ (南島叢書 (37))

沖永良部島のユタ (南島叢書 (37))

 本書の著者の先田光演は従妹の連れ合いであり、自費出版した「孺子の牛」の44.沖永良部島で紹介した。1989年6月に出版された時に購入したので、20年近く本棚に積読されていた。「あとがき」によると、鹿児島大学在学中から民俗学の研究会に参加しており、本書の中の「ユタの聞書」は在学中の研究である。また、山下欣一(元鹿児島国際大学教授)の名前も出てきており、彼の「奄美シャーマニズム」(弘文堂 1977年9月 出版当時は鹿児島県立工業高校教諭)も購入しているが、未だに積読である。ユタについては、「奄美シャーマニズム」が詳しく研究しているので、そのうちに詳しく読んでみようと思う。ユタは本書によれば「神によって選択された存在である。換言するならば神により聖別された存在であるとして、種々の予兆や、病苦等がユタ個人を襲うのであり、これらを神による『物知らせ』であるとするのである。『物知らせ』についてはユタによって判断されるのである。この判断の後で、ユタの指導によって、幾多の儀礼を実修しながら成巫していくのである。」ユタとノロの別についても記述されている。
 
沖永良部島のユタ」の目次は以下の通り。1.沖永良部島の神話−島建シンゴ 2.沖永良部島のユタの呪詞 3.ユタの請願 4.シマダティシンゴの周辺 5.ユタの聞書 6.民間療法聞書 7.民間療法と呪文 8.民間療法とクチ
 沖永良部島のユタの呪詞に書かれているものは長いので、民間療法でどうユタがいっているか紹介する。ハチギメェー(かぶれ)の治療は、呪文で治す。朝早くフキなおす人が洗面するまで出かけて行って吹いてもらう。とし、以下の呪文を唱えてから、患部に息を3回吹きかけさせる。
 「ハチギー ハチギー ニーフカバ スラハリリ スラフカバ ニーハリリ ハリラントゥニ ハニヤマニウイティンコーシュンド ナマニムトゥム ファダクレティタボリ ホーホーホー」(ハチギー<木の名> ハチギー 根吹かば 末枯れよ 末吹かば 根枯れよ 枯れねば 金山にのっけて 蒸すぞ 今すぐに 元の肌を与えたまえ)
 さっぱり解らない。多分、現在の島の人たちもほとんど知らないだろう。ユタは今でも存在するのだろうか。2006年4月に沖永良部島に行ったが、案内してくれた先田さんが、ここは霊的な場所だというところが数ヶ所あった。木に覆われていて今でもあまり人が近づかないが、そんな場所も減ってしまったとも言っていた。