中国語教室 李白

 昨晩の中国語教室は、唐時代の詩人李白の詩の勉強であった。詩は「望盧山瀑布(其二)」(盧山の瀑布を望む 其の二)であった。今回は、先生の発音について読むだけであった。宿題は文字にピンイン(併音)をふって正確に読むこと。
 李白は701年の生まれで、没年は明らかではない。玄宗皇帝にも仕えている。そこで調べてみた。「李白 詩と心象」である。大学時代の恩師松浦友久先生の著書で、この本は中国語に翻訳されて中国でも出版された。
 

李白―詩と心象 (1970年) (現代教養文庫)

李白―詩と心象 (1970年) (現代教養文庫)

 詩の全体は以下の通り。先生の解説を書き写す。

 日照香爐生紫煙
 遥看瀑布掛長川
 飛流直下三千尺
 疑是銀河落九天

 日は香爐を照らし紫煙生ず
 遥かに看る瀑布の長川を掛くるを 
 飛流直下 三千尺
 疑うらくは是れ銀河の九天より落つるかと

 景勝の地として名高い盧山。現在の江西省九江市の南にそびえる名山は、世俗を離れた仙界的な雰囲気をもつこともあって、晩年の李白が心をよせた土地の一つであった。盧山の中腹の絶壁にかかった大きな滝、それをうたった著名な連作二首がある。第一首は二十二句におよぶ長編の五言古詩。これは、それを総括した形での七言絶句である。
  日は香爐を照らし紫煙生ず
 いま太陽は、盧山の香炉峰を照らし、あたりには、紫の煙(もや)がけむって見える。古典中国語の「煙 yan」とは、モヤ、カスミ、キリ、ケムリなどの総称である。
  遥かに看る瀑布の長川を掛くるを  
 遥かに望めば、その香炉峰の絶壁を、大きな瀑布(たき)が、長い川をさし掛けたように流れ落ちている。(孺子の牛注 長川は他のテキストでは前川になっているものもある)
  飛流直下 三千尺
 この一句は、動感にみちた李白の詩句のなかでも、もっとも躍動的な表現であろう。 飛沫(しぶき)をあげて直下する、その距離は三千尺。
  疑うらくは是れ銀河の九天より落つるかと
 その勢いは、まるで銀河が、あの大空から流れ落ちてきたかと思われるほどだ。「九天」とは、九重(きゅうちょう)の天。天上の宮殿には九つの門があるという伝承から、天空、大空指すようになった。
 天の川が大空から流れ落ちるというイメージは、たしかに壮大で迫力にとむ。着想が新鮮で個性的なため、後の詩人がこれに似た表現をすると、どうしてもこの詩のイメージから抜けることができず、いかにも李白の模倣という感じを与えるほどであった。