空中征服

 賀川豊彦の「空中征服」を検索したら、社会思想社の現代教養文庫版がでてきた。私が古書店で購入したのは、1,280円もした。

空中征服 (現代教養文庫 (1311))

空中征服 (現代教養文庫 (1311))

 本のカバーには本書のほかにベストセラーになった「死線を越えて」「太陽を射るもの」(続死線を越えて)・「壁の声きく時」(続々死線を越えて)か刊行されているとあった。「死線を越えて」は、スラム街に移り住んで、他人のために自己を捧げつくすというキリスト教的隣人愛を実践した、賀川の自伝的小説である。賀川は最近再評価されてきて、PHPから「死線を越えて」が再刊されている。徳島新聞でも、彼については再三にわたり取上げられている。
 賀川は、徳島にゆかりが深い。解説によれば、妾腹の子であった賀川は4歳の時父と母をなくし、徳島県板野郡堀江村(今は鳴門市)の賀川家(そこに父の正妻と祖母がい)に引き取られ、県立徳島中学に通った。そんなことから、鳴門市の大麻町のドイツ館に隣接した場所に記念館が建てられている。彼のおこなった幅広い仕事が紹介されているのpで、徳島に立ち寄った折には是非見てもらいたいものだ。生協運動の創始者である賀川の記念館は、全国の生協の協力を得て建てられている。しかし、最近は財政困難で運営が大変なようだ。
 「空中征服」は最初「大阪日報」に連載され、1922年末に改造社から出版された。特に面白いのは、賀川が挿絵も担当していることだ。大阪を舞台として、工場からだされる煤煙に人々の健康が侵され、その改善のために空中都市を作ろうというのだから、発想が奇想天外である。