「論語」再説

 結局、金魚の稚魚は十数匹になっていた。そこで、別に船プラを買って入れることにした。
 

「論語」再説 (中公文庫)

「論語」再説 (中公文庫)

 本書は、1984年に講談社現代新書を改訂・増補されて出版された。テーマを設定して、「論語」の主張を探る構成をとっている。論語の章句を解説するのではなく、孔子の生きた時代背景も紹介されている。論語の理解の仕方が、孔子が語った時代とどう変わってきているのかが解って面白い。道徳の見本のように理解されている論語が、それとは違うことが理解される。
 論語の読み方についても言及されている。「論」という語は「LUN」と読み、普通は第4声(下さがりに発音する)で読むが、「論語」の場合の読み方は第2声(尻上がりに発音する)で読む。そう言えば、初めて論語を松浦先生の私的ゼミで学んだ時は(中国語で論語を輪読する)第2声で発音していたのを思い出した。
 著者は、「どうやら中国人は、『論語』を『倫語』(LUNの第2声)といったイメージで捉えていたようである。しかも、この捉えかたは、実は古くからのものである。例えば皇侃(おうがん)という人(6世紀・六朝時代の終わりごろ)の『論語義疏』という注釈書の序文は、鄭玄(じょうげん)という2世紀の大注釈家の説などに基づきつつ『論語』の『論』字の読みかたについて、いろいろと説いている。『倫』と読むとき、その『倫』とは、『次(順次)』或いは『理(あらゆる道理』、或いは『輪(十分に整っていて、車の輪が回るように限りない)』とかの意味であるというふうに。」と説明している。
 そのほか、君子と小人、孝行、金銭・地位などなど、大変面白い。通俗的論語解説書が氾濫する中で、歴史の中で生きてきた「論語」が理解される。