詩経

詩経―中国の古代歌謡 (中公文庫BIBLIO)

詩経―中国の古代歌謡 (中公文庫BIBLIO)

 白川静の「孔子伝」に続いて「詩経」を読んだ。詩経は、中国の古代歌謡であるが、いろいろな解釈がされている。成立が紀元前のものだから、難解な意味と言葉の本義が変わってしまって、理解が困難なようだ。
 本書は、「万葉集」の歌なども紹介して、古代人がどのような考え、社会を送っていたか中国と日本を比較させて紹介しているのがおもしろい。
 詩経を読んだのはこれも40年も前。筑摩書房世界文学大系中の「中国古典詩集 詩経国風・楚辞」(橋本循・青木正兒)と岩波新書の「新訳詩経」(目加田誠)と「中国詩人選集 詩経国風上下」(岩波書店 吉川幸次郎小川環樹)であった。
詩経国風 (上) (中国詩人選集 1)

詩経国風 (上) (中国詩人選集 1)

 「中国詩人選集 詩経国風上下」では、編者を孔子としているが、他の書ではそうではないようである。詩経という呼び名は必ずしも古くはなく、孔子の時代には「詩」と呼ばれていた。中国最古の詩歌集である。紀元前1100年から紀元前600年ころの歌が集められている。孔子も非常にこの詩経を重視しているだけでなく、その後の中国にとっても重要な位置を占めている。
 詩経は、政治的・社会的な解釈が施され、詩の本来の意味が曲解されていると著者の白川静は指摘している。
 「詩篇詩経)が経書として特殊な解釈の上に早くから古典化したことは、詩篇にとって必ずしも望ましいことではなかった。古代文学のもつはつらつたる民族精神の胎動が、そのためにかえって権威化し形式化して、ゆたかな生命の流動をはばむ結果となるからである。『詩』が謎のような解釈学の迷路にとじこめられて、古代文学としての正当な理解の道を失ったことは、『詩』にとってはむしろ回復しがたい損失であった。」
 引き続き、平凡社東洋文庫から出版されている「詩経雅頌」「詩経国風」を読もうとも思うのだが、ここは少し頭を休める本でも読ことにする。