戦争
久しぶりに大岡昇平を読んだ。「戦争」である。
- 作者: 大岡昇平
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/07/18
- メディア: 文庫
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今までに読んだ彼の本は「日本文学全集」(新潮社)に入っていた「大岡昇平集」(俘虜記・武蔵野夫人・野火・花影・神経さん)と「文学的ソブェト紀行」(講談社)であった。彼の小説のなかで多く読まれているものに、戦争に関するものがたくさんあるが、代表的なものがこの大岡昇平集に入っていた。フィリッピンのミンドロ島での戦争体験が、戦後の彼のバックボーンになっている。「戦争」は彼のこの経験をその生い立ちを含めて語ったものを本にしたもので、考え方がよくわかる。
愛国心について、こう語っている。「愛国心っていうのは、ま、古い言葉でね。国が何かっていうことがわかんなくなっちゃた今日は、あいまいになっちゃった概念ですが、人間が自分一人のことだけ考えればいいんだというエゴイズム、これは、ま、悪い意味に使われるでしょう。結局、愛国心ってのは、なんだが個人のエゴイズムを超越するんで、なんか美しくて、いいことのようなイリュージョンが生まれるんだが、結局自分の国土さえうまくいけばいいんだというんですから、エゴイズムには変わりはない。それは愛国心にかられて、ほかの国へいって悪いことをする人間の場合を考えればわかります。」
「戦争とは国家の暴力の顕在化したものですが、対外的には戦力という暴力が使われるが、対内的には兵役強要の形で出る。二重構造になっているんですが、これが一緒に崩れるんだな、負け戦になると。日本の徴兵制度は奴隷的なものだったから、脆かったんですよ。」
今の若者は、自衛隊にでも入れて鍛えなければいけないという人がいるが、奴隷を育てる制度のなかではまともな人間は育たない。