きょうされん四国ブロック会議

 2月20・21日、愛媛県の「今治湯浦ハイツ」で開かれた「第9回きょうされん四国ブロック学習交流会」に参加した。海に近い丘の上にたった施設は、眺望もよく天気にも恵まれた。
 四国各地から共同作業所などの利用者・職員が150名ほど集まった。今回の集会は、「さよなら”障害者自立支援法”つくろう私たちの未来を!四国から」をテーマに開かれたが、昨年の民主党政権成立で、障害者をめぐる状況は大きく変わってきた。長妻厚労相が自立支援法の廃止と新法の創設を言明したからだ。
 自立支援法が憲法違反であるとして、利用者が立ち上がり全国の14地裁で71名が原告として、自立支援法の廃止を目指して戦ってきた。人間としての尊厳を侵す自立支援法はその成立からずっと、利用者・家族・職員に大きな負担と苦しみを与えてきた。国と原告との和解が成立し、「基本合意」ができた。その主な内容は①遅くとも2013年8月までに自立支援法を廃止する。 ②国は、憲法に違反すると訴えた原告の思いを真摯に受けとめ、多大な混乱と悪影響を招き、人間の尊厳を深く傷つけたことに対し、心からの反省の意を表明する。 ③国は、現行の介護保険との統合を前提とせず、原告が指摘した自立支援法の「6つの問題点を踏まえて、新法を検討・対応する。 となっている。
 6つの問題点とは、①支援費制度の時点及び現在の障害者自立支援法の軽減措置が講じられた時点の負担額を上回らないこと。 ②少なくとも市町村民税非課税世帯には利用者負担をさせないこと。 ③収入認定は配偶者を含む家族の収入を除外し、障害者本人だけで認定すること。 ④介護保険優先(障害者自立支援法第7条)を廃止し、傷害の特性を配慮した選択性の導入をはかること。 ⑤実費負担については、厚生労働省実施の「障害者自立支援法の施行前後における利用者の負担等に係る実態調査結果について」(平成21年11月26日公表)の結果を踏まえ、早急に見直すこと。 ⑥どんなに重い障害を持っていても障害者が安心して暮らせる支給量を保障し、個々の支援の必要性に即した決定がなされるように、支給決定の過程に障害者が参画する協議の場を設置するなど、その意向が十分に反映される制度とすること。そのために国庫負担基準制度、障害区分制度の廃止を含めた抜本的な検討を行うこと。 である。
 きょうされんでは、これ等のことを実現させるために、理念法としての「障害のある人の権利と自由に関する法律」(国内版「障害者権利条約」として、障害者基本法を抜本改正)の成立と、実定法としての①障害者総合福祉法 ②障害者就労支援法 ③差別禁止法 の成立が必要だと提案している。
 障害者をとりまく周囲の環境を変えることが必要で、今の障害の考え方である「医学モデル」を「社会モデル」に変えてそれに基づく障害の決定がなされることが重要だとしている。そのためには、まだ日本では批准されていない「障害者権利条約」を批准し、日本の障害に関する考え方を根本から変えることが必要になっている。そして、優先的に取り組む課題としては、①自立支援法の廃止に伴う障害者総合福祉法の制定 ②障害者の定義と範囲の決定 ③差別禁止法の制定 ④教育改革 ⑤雇用・就労施策 ⑥精神障害施策 ⑦情報・交通バリアフリー ⑧モニタリング を取り上げている。
 日本の障害関連予算はGDP(国内総生産)の0.7%になっている。これはOECD経済協力開発機構)の中でも、格段と低い額である。OECDの平均が2.5%(最高はウェーデンの6%)であるから、最低でも3倍に予算を増やすことが求められている。国の財政が厳しいという言い訳は通用しない。政党助成金・米国への思いやり予算など、工夫をすればいくらでも財源は確保できる。ところが、来年度の予算案を見てみると、自立支援法による1割負担が全廃されるようにはなっていない。応益負担というこの1割負担は、障害者の生活を脅かしている。働いても1割の利用料を取られるのは、普通の勤労者の労働では考えられないことだ。
 とにかく、実のある二日間であった。