朝鮮人特攻隊

朝鮮人特攻隊―「日本人」として死んだ英霊たち (新潮新書)

朝鮮人特攻隊―「日本人」として死んだ英霊たち (新潮新書)

 日本は、戦後65年も経っているのに未だに過去の清算がきちんとされていないと思う。両国との歴史認識を全く同じにすることまでは必要はないと思うが、真摯な立場で見直して欲しいと思う。民主党政権になってそこらあたりがどうなるか興味もあるが、個々人が日本の現代史を考え直すことこそ必要ではないか。
 太平洋戦争末期に、無謀な特攻作戦で多くの若者が戦死した。本書では「日本人」として死んだ朝鮮人兵士が取り上げられている。彼らは、戦中・戦後の歴史の中でいろんな評価を与えられ、政治的にも利用されてきた。英雄とされたり、その反対に親日派の裏切り者にされたりして、家族を含め時の政権の意思と歴史に翻弄された。
 祖国を奪われたあの時代、特攻兵として、従軍慰安婦として、日本に強制連行されて労働を強制された人びとがいたことを、現代史の片隅に追いやっては、相互理解は進まないだろう。
 著者は「あとがき」でこう書いている。
 「太平洋戦争後に独立する祖国など想像もできなかった時代の雰囲気を、現在の歴史の価値観で否定することはできない。変わらない歴史をドラマのように変えたところで、そこから生まれるものは何もない。むしろ私は、あるがままの歴史を受け入れ、あの時代に生きた人たちの声にできるかぎり近づきたかった。歴史の真実が、そこから聞こえるような気がした。」
 それでも、過去に「日本人」として戦争に参加した人々の真実の声を聞くのは大変困難なことだ。靖国神社に一方的に合祀された朝鮮・台湾の軍人・軍属がいるが、裁判などを起こして合祀を取りやめるよう訴えてきた。「神」になってまで日本に拘束されるそれらの人々、遺族の無念さはいかばかりであろうか。