日本の近現代史をどう見るか

日本の近現代史をどう見るか〈シリーズ 日本近現代史 10〉 (岩波新書)

日本の近現代史をどう見るか〈シリーズ 日本近現代史 10〉 (岩波新書)

 岩波書店の「シリーズ日本近現代史」の第10巻目である。シリーズを買って読もうと思ったのだが、結局は買わずじまいで、シリーズ最後のこの巻だけ買った。本書は、「各巻の著者の方々に、それぞれの時代の性格をとらえる際の根本的な問題を『問い』のかたちで掲げ、それに答えてゆくことで、日本の近現代史を見るときの要点を論じ」たものであった。
 終章の「終章 なぜ近現代日本の歴史を学ぶのか」で著者の成田龍一は、①なぜ「日本近現代史」の歴史を学ぶ必要があるのか ②いま「通史」を学ぶことの意味はどこにあるのか 問題提起している。
 歴史学の関心が推移することにより、通史が書き換えられてきて、「戦後歴史学」から「民衆史研究」に移行してきて、現在は「現代歴史学」へと来ているとしている。私が、学んだのは「戦後歴史学」であった。本書でも紹介されている「日本の歴史」(1963〜66年 上・中・下 岩波新書 井上清)と「昭和史」(1955年 新版1959年 岩波新書 遠山茂樹今井清一藤原彰)であった。本シリーズは「現代歴史学」の立場から、「『日本』と『日本人』の推移ではなく、『日本』や『日本人』がどのように定義されてきたか、そしてそのことをめぐってどのような出来事が起こり、いさかいや抑圧、排除や規制がなされてきたか」を考察している。
 また、通史を学ぶことについて、「『シリーズ日本近現代史』で『家族』『軍隊』『植民地』は近代が作り出したものであるとともに、それぞれ現代の社会を深部で規定しています。またこれらを通して、19世紀後半から20世紀を経ていまにいたる歴史を見たときに、『日本』の歴史性と(いま)の課題が明らかになると考えた」こととしている。
 歴史学の研究も、コンピュータの発展で資料のデータベース化が大きく進み、それらをどう活用して今後にどう生かしていくかが大きな課題となっている。世界の国々・人民の関わりが、近代が始った頃から比べると、格段に密接になってきている現在、歴史をどの立場からどう見てゆくかが、今まで以上に重要になってきている。
 また、各巻の著者が5冊ずつ「お薦め」の本を紹介(45冊)している。その中で私が読んだことがあるのは「夜明け前」(島崎藤村)「日本の軍隊」(飯塚浩二)「日本の近代と中国の近代 魯迅を中心に考える」(竹内好)「美しきものの伝説」(宮本研)「時間」(堀田善衛)だけであった。ううむ、・・・。