看護科学生

 昨日(6月14日)に、徳島文理大学保健福祉学部看護学科の2年生の学生に、「肝炎患者会と肝炎対策」と題して、30分ほど話をした。学部長の伊東教授の話によると、学外の人たちに、違った立場から話を聞くことを文部科学省もすすめており、その一環としての授業であった。
 今回の授業に参加した学生は180名ほど。大きな教室にいっぱいであった。最近は、男子学生も増えていて、10数名はいただろうか。学生のほとんどはまだ学外の実習に出ていないので、果たしてきちんと理解してくれるかどうか心配だと、担当の先生は話していた。それよりも、こちらの話が学生たちに理解できるような内容になるかどうかのほうが心配であった。
 最初に伊東教授が「C型肝炎」について特別講義をおこなった。C型肝炎が増えた理由、C型肝炎の特徴、肝癌の内科治療、C型肝炎の予防対策などを、50分ほど話された。学生にとっては、ほとんど初めて聴く内容だったのだろう。皆、熱心にノートをとっていた。もっとも、話の随所にこれは昨年の国家試験に出たとか話すものだから、のんびりはしていられないのだろう。
 私は、肝炎患者会の歴史、患者の思い(病気・仕事・家族・差別・偏見)、B型肝炎訴訟、薬害C型肝炎訴訟、薬害肝炎救済法、肝炎対策基本法看護学生に期待するもの、などについて話した。あとで、話を聞いてのレポートを学生が書くので、よく書けているものがあったら送ってくれるとのこと。学生の反応がどうだったか、楽しみである。

 以下は、事務局長に手伝ってもらったレジメの概要
  肝炎患者会と肝炎対策
   徳島肝炎の会:有川哲雄
Ⅰ.はじめに
自己紹介:B型肝炎ウイルスのキャリア、集団予防接種で感染したと思う。
1.患者会活動の歴史
 1.徳島の患者会
徳島B型肝炎患者友の会(1980年6月14日)今からちょうど30年前。目的は「会員相五の親睦と交流を通じて、一日も早く健康な体をとりもどし、社会復帰できるように運動をすすめる。」
徳島肝炎の会(1981年1月に改名)肝炎の会を多くの人に知ってもらい、肝炎対策を進める目的で、1981年7月19日に医療講演会を徳島肝炎の会主催で開催。500名参加。講師に織田敏次先生(東大医学部長・厚生省肝炎研究班の責任者)講演会の成功には、徳島大学の斎藤教授にも大変お世話になりました。織田先生は、講演の後の交流会で「患者さんにもっと厚生省に意見・要求を言って欲しい。そういうことが、肝炎研究対策費の増額になるし、治療する側としてもはげみになる、と言っていました。患者と治療する側が一体になって肝炎対策を進めることが大事だと強調されました。
2.全国の肝炎患者会
全国肝臓病患者会協議会(1980年10月4日 札幌で「肝炎患者の全国交流集会」参加。 北海道・長野・山梨・徳島・肝炎の会)
肝炎の会(1971年 個人加盟)
日本肝臓病患者団体協議会(1991年 大同団結)
2.患者の思い 
なぜ私たちは患者会を作り活動するのか 患者は多くの不安を抱えて生きている。
① 病気:治るのだろうか・民間療法・保険・治療費の自己負担
② 家族:子どもがまだ小さい
③ 仕事:転職・バイト・収入減、仕事をやめさせられる恐怖。
④ 差別・偏見:就職差別・すぐうつる・安心して話せるのは患者会
初代会長・二代目会長・長野の会長(当初の患者会の代表は、みな若い人たち)中野さん
「STOP!肝ガン 市民公開講座」2010年5月15日(土)のアンケートから
患者会を辞められない。後継者がいない。重大な病人が会を運営。辞めると会が存続できなくなる。

Ⅱ.交通整理
なぜ、肝炎訴訟なのか
 B型肝炎訴訟:むかしは「医原病」と言われていた。集団予防接種のときに注射針の使いまわし(1970年ごろまでおこなわれていた)で感染拡大。1989年北海道肝炎患者友の会の会員5名が提訴。裁判の最終目的として「B型肝炎の恐ろしさや、そのようなB型肝炎の感染が国の怠慢により拡大した事実を広く世論に訴え、これを圧力とすることで、国に肝炎患者が安心して治療を受けられる環境を整えさせること。」
小池さんの思い(徳島新聞2010年6月10日の記事参照)
 薬害C型肝炎訴訟:1964年、日本において初めてフィブリノゲン製剤の製造・販売が、1972年には第9因子製剤の製造・販売が開始された。これらの血液製剤は止血剤として使用され、とりわけフィブリノゲン製剤は、出産時の出血のときに、止血目的で大量に使用された。しかし、これらの血液製剤にはC型肝炎ウイルスが混入していた。2002年10月に東京13名、大阪3名の被害者が原告になり、このような危険な血液製剤を製造・販売した製薬企業の責任を追及し、さらには、血液製剤の製造を承認した国の責任を追及する訴訟。目的は、薬害肝炎被害者の救済と、全肝炎患者の救済。裁判によって、自分たちだけが救済されたらよいという考えではない。
   両者に共通するのは、患者・被害者には何も落ち度がなく、国・製薬企業によ
って患者にされ、肉体的・精神的・金銭的に多大な犠牲を強いられたこと。

1.「薬害肝炎訴訟」とは
2.「薬害肝炎救済法」とは (2008年10月成立 救済期間は2013年1月まで)
3.「肝炎対策基本法」とは (
 4.現在行なわれているB型肝炎訴訟とは

Ⅲ.「肝炎対策基本法」はできたけれど・・・・
  肝炎対策基本法(では肝炎が国民病になったことについての国の責任を明記すると  
ともに、国・地方公共団体・医療従事者等の責務を定めた点は評価できる一方、具体的な予算措置は記載されていません。予算編成にむけて実際に「肉付け」していくことが課題になります。「これから始まる」というのが率直なところです。
基本法では、
 B型肝炎及びC型肝炎に係るウイルスへの感染については、国の責めに帰すべき事由によりもたらされ、又はその原因が解明されていなかったことによりもたらされたものがある。特定の血液凝固因子製剤にC型肝炎ウイルスが混入することによって不特定多数の者に感染被害を出した薬害肝炎事件では、感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについて国が責任を認め、集団予防接種の際の注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスの感染被害を出した予防接種禍事件では、最終の司法判断において国の責任が確定している。
インターフェロン核酸アナログ製剤の補助は開始されましたが、適応になる人のほうが少ないのが現状です。SNMC(強力ネオミノファーゲンシー)やウルソなど  しか使えない患者にはまだ補助はないのが現状です。
②これまで収入に応じ、1万円、3万円、5万円だった自己負担の限度額が1万円、2万円になりました。負担がへったことは評価できるでしょう。
③肝機能障害による身体障害者手帳身体障害者福祉法による)が交付されるようになりました。ただ、交付されるのはきわめて重度(Child-Pugh分類の3ヶ月以上グレードC)な方に限られています。黄疸、腹水、肝性脳症などがある方しか交付されないということですのでハードルが 高すぎます。

Ⅳ.その他
 看護科学生に期待するもの
 ○「看護」
「看」 目の上に手かざしてものを見る。手をかざして遠くを見る。しげしげと見る。
  「護」 監視し、守る。

   患者が問題としているのは、病気だけではない。病気・仕事・家族・偏見・差別のなかで闘病している。そういう患者の状況をとらえて、医療チームの一員として、患者を中心に看護して欲しい。看護の勉強だけでなく、幅広い勉強を。例えば紹介した「肝炎 市民公開講座」毎年開催。