楊逸「ワンちゃん」

 8月12日に神戸空港に娘たちを迎えに行ったのだが、予想より車が混んでいなかったためと、飛行機の到着時間を30分ほど間違えたため、長い時間待つはめになった。
 そこで、時間つぶしに空港にある書店で買ったのが、表題の本である。中編小説が2編入っていて、読むのに手頃だと思ったからである。
 インターネットで著者の略歴を調べると、下記のとおりであった。
略歴 [編集]
父はハルピンの大学で漢文を教えていたが、文化大革命で農村に下放される。中学生の頃、日本にいる親戚が送ってきた日本の都会の風景写真を見て日本に憧れる。1987年、留学生として来日。この時点では日本語が全く分からなかったため、皿洗いなどの仕事をして授業料を稼ぎ日本語学校に通った。歌手の松田聖子が歌うカセットテープをゴミ捨て場から拾って、それを日本語の聞き取りの勉強に使ったりもした。お茶の水女子大学教育学部地理学専攻卒業後、在日中国人向けの新聞社勤務を経て中国語教師となる。

ワンちゃん (文春文庫)

ワンちゃん (文春文庫)

 表題の作品で2007年の第105回文学界新人賞を受賞(芥川賞の候補作にもなった)した。2008年に「時が滲む朝」で芥川賞を受賞している。日本語以外の言語を母語とする作家として、史上初めて芥川賞を受賞したとして、大きな話題になった。
 人によると芥川賞直木賞の受賞作を話題作として必ず読む人もいるようだが、私はそんなことをしたことはない。
 私が中国語を習っている先生も良く働くが、この小説に出てくる主人公の中国人もよく働く。1950年代・60年代の日本人のようなのだろうか。
 「老処女」という作品には、成語が出ていた。
 ①「樹倒散、人走茶就涼」
 ②「魚和熊掌不可兼得」
 ③「好事多磨」
 ④「三十而立」
 ①世間の冷たさを表現している。
 ②魚と熊の手は兼得できない。二つのものを得ることはできない。
 ③好事磨多し。
 ④三十にして立つ。自立する。
 とにかく、中国は成語が多い。新しい成語がたくさん作られるようだ。