日本近現代史を読む

 以前、岩波新書の「日本近現代史をどう見るか」を読んだので、今回は「日本近現代史を読む」を読んだ。

 基本的な視点は前著と同じであると思う。高校・大学時代に習った日本史から50年近くたっているのだから、資料も豊富になり多くの歴史的事実も明らかになってきているので、解りやすい。写真・図版も多く取り入れられている。
 本書では、「男女人民の政治的、社会的、文化的な進歩と前進のたたかいを権力・支配階級との対抗の中でとらえていくこと」「世界史との内的関連の中でとらえていくこと」「日清戦争以後の日本の植民地主義帝国主義的侵略の事実を明らかにすること」に重きを置いている。
 また本書では、「太平洋戦争」という用語ではなく「アジア・太平洋戦争」という用語を使用している。その理由として、「日本の敗戦後、アメリカの影響下で『太平洋戦争』という呼称が日本社会でも定着します。しかし、この呼称は、日米戦争中心の歴史観にもとづくものであり、中国戦線や東南アジアの占領地の問題が抜け落ちてしまうという難点があります。そのため、本書では、中国戦線や東南アジアの占領地の問題を重視するという意味で、『アジア・太平洋戦争』という呼称を用います。」としている。「15年戦争」という場合も、東南アジアの問題が抜け落ちてしまうことになるのだろう。
 また本書では最終章で「私達の課題」として、①過去の侵略戦争にたいする反省の問題 ②戦後日本の対米従属の問題の解決 ③日本経済を「ルールある経済社会」に転換する課題 をあげている。今の日本は、民主党政権も含めて、このような3つの国民的課題に背を向け、アメリカに追随し、財界本位の政治を続けており、ここを解決しないと、世界との平和的な共存はあり得ないと思う。