4月に北京に行った時、あちこちで季節に関係なく凧あげをしていた。先日、「中国凧見てある記」を読んだのだが、今では中国でもだいぶ凧上げで遊ぶ人も減ったようだ。それでも山東省濰坊には世界一の凧博物館があり、「世界凧の都記念広場」もあるそうだ。国際凧連合会の本部もあって、凧の世界大会も開かれ、世界各地からマニアが集まる。中国では凧上げは大人の遊びであるといってよい。

中国凧 見てある記 (新風舎文庫)

中国凧 見てある記 (新風舎文庫)

 中国語で凧は「風筝」(フォンジョン)と書く。筆者(平野康)は風筝びついてこう書いている。「この風筝の語源は南通凧のような『鳴き凧』から来ている。笛凧の前身は、凧に竹のつるで造った弦を取りつけたもので、これを揚げると、箏が鳴っているように響いたところから風筝と呼ばれるようになった。」また、南通凧博物館の資料を紹介して「凧とは本来、風の力を借りて音を鳴らす古筝のことなり。音を出さない凧は如何に美しくとも、口のきけない女性が空に昇るようなものであり、様々な音色を奏で、耳をつんざく仙人の音楽こそが妙趣に尽きるというものだ。」とも書いている。
 「郷土玩具辞典」によれば、凧は「最初は宗教上の占卜(せんぼく)の具や軍事に用いられた。起源は極めて古く、東洋では、その創始説として、紀元前200年代に中国の漢の武将韓信が敵城との距離の測定器具にこれを利用したのが起こりともいう。」と紹介している。日本には、平安朝以前に中国から伝えられている。
郷土玩具辞典

郷土玩具辞典

 著者が凧に関する詩を紹介し、訳してもいるので披露する。

  放飛風筝(鄭華作)
 少年用銀線
 扯着無際的未来
 在白雲藍天間放飛

 老翁用銀須
 牽着流失的歳月
 在世海滄桑中漫游

 天悠悠 地悠悠
 難得這份清静休閑
 難得悠悠天地観

 風箏飄蕩
 仿佛人生的梦境
 放飛風筝
 帯你進入童話里的梦

  凧上げ
 少年は銀の糸で
 無限の未来をひっぱって
 白い雲と青い空の間に放つ

 老人は銀のひげで
 失った歳月を引き寄せて
 移ろいゆく世を漫遊する

 天悠悠 地悠悠
 この得難い静かな休息
 得難い悠悠の天地の間で

 凧はゆらゆら
 まるで人生の夢のよう
 凧 凧揚がれ
 あなたをつれて童話の夢の中へ