島唄レコード百花繚乱 嘉手刈林昌とその時代

島唄レコード百花繚乱―嘉手苅林昌とその時代 (ボーダー新書)

島唄レコード百花繚乱―嘉手苅林昌とその時代 (ボーダー新書)

 この本は、池袋のジュンク堂で購入した。都会に行った時に良いのは、徳島では1フロアーしかない有名書店でも、それに十数倍もする売り場面積に、たくさんの本が並んでいることである。そこで思いがけない本を購入することができる。
 昔、時々「地方・小出版流通センター」を利用して本を購入したことがある。今でもあるようだ。なかなか大手の本の卸では扱っていない、地方や小さな出版社の本を扱っていて、そこでは優れた本をお目にかかることができた。
 出版社のボーダーインクをネットで調べてみたら、こう自己紹介していた。


 1990年に沖縄県那覇市に誕生した出版社。以来、沖縄に関することなら、 ぬーやてぃんしむさ(Everything is OK!)とばかりに、幅広く出版を続けてきました。
 「ボーダー」とは、「境界線」という意味もありますが、「どっちつかず」というニュアンスも含まれます。常に境界線ギリギリの発想で、新しい沖縄の本作りにこだわっていきたいと思います。 エッセイ、コラム集、歴史、民俗、教育、政治、コミック、ラジオの本など、かたい本からやわらかい本まで、これまでにおよそ250点の本を出版しています。 (2007年7月現在)


 沖縄は、本でも・新聞でも・レコードでも、いろんな分野で独自の世界を築いていると思う。やはり、琉球王国である。
 著者の小浜司は、現在島唄カフェ「いーやーぐゎー」店主だそうだが、店の名前が何を現わしているのか私にはわからない。
 沖縄で制作されたレコードが数々紹介されている。日本とアメリカに翻弄されている、戦後の沖縄の歴史が理解される。やはり、沖縄戦に関連した歌も多く歌われている。一つレコードの一節を紹介する。「カンポーぬ喰ぇぬくさー」歌:でいご娘 1975年。
  「我親喰わたる あぬ戦争 我島喰わたる あぬ戦争」
 1972年に出された「平和の歓び」の歌詞について、「苦しみ忍で 暮らちちゃる沖縄 今や日の本ぬ 光うきて我島沖縄」は、「日本に復帰すると平和の歓びに浸れると思っていたが、基地がなくなるどころか相変わらずの基地被害に悩まされるという危険と隣りあわせの現実。『平和の花』が咲いたと思っていたことも幻想でしかなかったということか。」と語っている。
 嘉手刈林昌(1920年〜1999年)についても、その若き時代から島唄の第一人者となったことまで書いている。沖縄・奄美のCDが80枚ほどあるが、ビギン・大島安克などもよいが、やはり嘉手刈林昌である。もう40年近く前に買ったレコードで、1974年に日比谷野音の「琉球フェスティバル74」は最高ですね。一番油ののった時期の張りのある声で、司会の上原との掛け合いが絶妙です。解説を竹中労が書いていた。
 我が家にあるCDは上記のほかに、「嘉手刈林昌 BEFOR/AFTER」(1989年 2枚組)「沖縄島唄 嘉手刈林昌」(1991年)、それに年代は不明だがレコードをCDにした「決定版沖縄の民謡 琉球情歌行 嘉手刈林昌」である。



上の写真は、宮内フサ(1985年102歳で死去)作品 牛乗り童子

俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
  ●思ひすつるな かなはぬとても 縁と浮世は 末を待て
  ●花は散りても 又春咲くが 君と我とは 一盛り
  ●神や仏を 怨むは輪廻 過去の因果に 是非も無や