魯迅の言葉

魯迅の言葉

魯迅の言葉

 表題の本が平凡社から出たので購入した。同じ表題で、1955年に増田渉編で創元社から、1966年に近代文学研究会編で芳賀書店から出版されているようだ。今回の本は、日中共同出版で中国版では「魯迅箴言」と題して365句が選ばれ、その中から日本版では130句が掲載されている。日本版では日本語と中国語が併記されているので、中国語の学習にもなる。
 先に触れた藤井省三の「魯迅」では、大江健三郎が母親から魯迅の本を貰ったことが書かれていたが、「魯迅の言葉」の栞には中国語版の本に向けた大江の文章が紹介されていた。
 「私が森のなかの村から都市の学校に向かう朝、母親が黙って魯迅の短編小説集をくれた。最初の帰省をすると、「故郷」を読んだか、と訊ねられた。こうして私は文学と出会い、社会を生きる基本姿勢を教えられた。私がこれまでに体験した、最も不思議な幸運。」
 この本は深紅色とでも言うのか紅い表紙をしている。赤色は中国では幸運やめでたいことを表す色になっているが、私にはどうもなじめない。それは昔、文化大革命が華やかだったころ、紅衛兵が鮮紅色のカバーをした小さな「毛沢東語録」を掲げて、中国全土を混乱に陥れ多くの貴重な人物・文物を破壊した記憶とつながるからである。日本でも毛沢東を信奉する団体が「毛沢東語録」を振り上げて乱暴狼藉を行っていた。文化大革命が起きてから、私の中国への関心はだいぶ薄れてしまった。中国では毛沢東については功7分罪3分という評価だと聞いているが、罪の方はもっとあるのではないだろうか。中国の人民元紙幣には毛沢東の肖像があるが、これもどうもなじめない。一般市民は、中国共産党へは面従腹背の姿勢で対していると、中国に旅行した時に感じたものだ。
 まあ、とにかく中国語の学習がてら読んでみようと思う。



 上の写真は宮内フサ(1985年102歳で死去)作品 鉢巻達磨 右92歳

俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
  〇月の曙 この村雨に 今は忘れぬ 時鳥
  〇斯(か)くと知らさで 消え行くならば 辛き報ひの ありやせん
  〇磯の松が根 波打ちかけて 立名わりなき 恋の道