東方の黄金 ロバート・ファン・ヒューリック

東方の黄金 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1804)

東方の黄金 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1804)

 先日、東京に行った時に持参したのが表題の本。原題名は「THE CHINESE GOLD MURDERS」で中国訳では「黄金案」。
 いつも、訳者あとがきや付録が楽しみであるが、今回は著者の息子(著者と同じく外交官になっている)の「随想 父の思い出」があり、著者の父親としての様子が窺われた。早川書房での出版順では11番目だが、ディー判事としての活躍では最初の事件。初めて知事として赴任した地での、新妻失踪・凶獣出没・幽霊騒動などが知事の頭を悩ます。
 著者は、推理について他の人の言葉を引用して「司直の任にあたるものはかまえて自己の推理に固執せず、捜査進行にともなって何度となく検討を重ね、事実と照合しなければならぬ。そして、符合しないと思われる新事実が見つかった場合、その事実を推理に当てはめようとするのではなく、事実に合わせて推理を修正するか、推理を断固破棄すべきだと。」
 こういうふうにすれば、昨今の検事による冤罪事件などの発生も少なくなるのではないかと思われる。
 
 上の写真は、宮内フサ(1985年102歳で死去)作品 左から、具足馬、俵馬、蛇の目馬


俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
  〇我が思ひは あの浮き雲よ いづこ行衛ぞ 定めなき
  〇人目忍ぶの 草葉に結ぶ 露の玉虫 ねにぞ鳴く
  〇ものや思ふと 問ふ人あらば せめて語りや 慰さまん