莫言「牛 築路」
莫言「牛 築路」を読んだ。
- 作者: 莫言,菱沼彬晁
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/02/17
- メディア: 文庫
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両作品ともに1986年に発表されている。時代的には文化大革命中のことが書かれている。毛沢東が主導した文化大革命は、中国だけでなく世界のあらゆる分野の運動に、大きなマイナスの作用を果たした。私などは、中国では毛沢東の肖像が人民元のデザインになっていることが不思議である。もうそろそろ毛沢東の亡霊から脱却してよいのではなかろうか。中国では一般的には毛沢東についてその評価は功罪半ばというより、功が八分と言われているようだ。
文化革命当時の政策が非生産的・非合理的だったことは本書の描写の中からも理解されるが、もちろん莫言はそのことを主題としてはいない。
「牛」ではグロテスクな牛の去勢手術が書かれ、またその睾丸を奪い合うありさまがいかにも人間の愚かさを描いているようで、また、当時の中国社会の貧困さを物語っているようでもある。
「築路」は道路建設現場が舞台ではあるが、そこで働く男たちの身の破滅が描かれている。そこでは結局女性が勝利(?)を得る。黒い大きな犬が登場するが、主人公の楊六九との格闘場面では、正しく人格を持った存在として描かれ、楊六九をとことん追い詰めるのであった。しかし、何と言っても白眉の存在は白蕎麦という女性である。白蕎麦は毎日のように豆腐を楊六九に売りつけに来る。楊は彼女の魅力に負けてそれを買う。
解説の飯塚容が中国語で「女に手を出す」ことを「豆腐を食う」と表現する。としている。こんなところは、中国語の専門家でないと理解できない。ということで「中日大辞典 第4版」(大修館書店)で調べてみた。「①女性に悪ふざけする。 ②人をからかう。冗談を言う。 ③(旧)不幸のあった家へお悔やみに行く:葬式は精進料理でよく豆腐を使うことから。」とあった。
その下に文例として「我吃你的豆腐」とあったが、これは「このくたばりぞこない:老人を罵る語。」とあった。こう言われないように気を付けよう。
我が家の張子面 おかめ 倉敷張子
俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
○見れば見渡す 棹さしや届く なぜに我が恋届かぬぞ
○石に立つ箭(や)の ありとは聞けど なぜに届かぬ 我が思ひ
○墨田川さへ 竿さしや届く なぜに届かぬ 我が思ひ