B型肝炎特措法案で東京行動

 21日・22日に「B型肝炎特措法案」について、修正を求めるための国会行動に参加した。この特措法案には、重大な問題点がある。
 それは、この法案には前回も指摘したように、肝硬変・肝がんになったり死亡して20年を経過した被害者は救済しないということだ。国が、予防接種時の注射器の使いまわしが、B型肝炎の蔓延の原因の大きな一つだという認識を意図的に覆い隠し、長年被害者を放置しておきながら、被害を救済しないというのでは道理に合わない。

 法案の第六条にはこう明記されている。

第六条 特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の額は、次の各号に掲げる特定B型肝炎ウイルス感染者の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
B型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変(重度のものに限る。)若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者(当該肝硬変(当該肝がんにり患した者にあっては、当該肝がん)を発症した時(当該死亡した者にあっては、当該死亡した時)から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者を除く。) 三千六百万円
B型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変(重度のものを除く。)にり患した者(当該肝硬変を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者及びB型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変(重度のものに限る。)若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者を除く。) 二千五百万円
三 慢性B型肝炎にり患した者(当該慢性B型肝炎を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者及びB型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者を除く。) 千二百五十万円

 この、肝硬変・肝がん・死亡者については、基本合意の内容から明らかに大きく後退したもので、原告団はこのことを容認して基本合意をしたわけではない。国の、基本合意に対する背反といってよいだろう。
 法案を作るならば、基本合意より充実したものを提案するべきで、そうでなければ法案を作り意味がない。
 両日の国会議員要請では、あくまでも20年を越えた被害者を救済するために、法案の修正を求め、衆参両院の厚生労働委員会所属の議員に訴えた。
 以下は、その文書である。

   
国会議員の先生方へ

   今般のB型肝炎特措法案への全国原告団の考え

       2011年11月21日
               B型肝炎訴訟全国原告団 代表 谷口三枝子

 私たちは、11月20日に全国原告団代表者会議をもちました。そして討議の結果、原告団としては、下記の結論に至りました。

1 裁判所での「基本合意成立」は、今日まで何十年間も救済されずに苦しんできたB型肝炎患者にとって大きな喜びであり、この間尽力いただいた各党・議員のみなさんに対して、心より感謝しております。
  ありがとうございました。
2 しかし、私たちはそのとき、既存の法律に縛られる裁判所での基本合意においては苦渋の決断で受け入れるが、将来の立法時には除斥の撤廃を求めて行動することを確認しました。このことは、基本合意を受け入れる際の原告団声明において明記しております。
3 基本合意に基づく立法にあたっては、もっとも直接的な当事者である原告団の考えを聞いて欲しい、そのために事前に法案について知らせて欲しいことを、私たちは繰り返し要求してきましたが、残念ながらそれがないまま、今回、突如の法案発表・上程となりました。
4 しかもその内容は、基本合意で触れられていなかった肝硬変以上の発症除斥対象者を和解金の支給対象から明確にはずすということが付加された法案でした。
5 発症除斥の問題は、
①発症後、より長く苦しんでいる患者が逆に差のある救済しか受けられない。
②20年間以上救済を放置してきた政府が20年間経過したことを理由として救済に差を設ける。
という点に問題があります。この事実を正確に知れば国民の誰からみても極めて不条理で不正義な規定だと思います。
6 私たちも、臨時国会という限られた審議日程の中で、極めて困難なことは理解しております。しかし、だからといって、このような不条理な除斥規定を含んだままの法案に対してそのまま賛成することはできません。困難ではあるが、修正を求め続けたいということで原告団は一致しました。
  これは、同じB型肝炎患者として、発症後20年経過した患者を見捨てる対応は決してとれないという思いからです。
7 原告団にとって特措法が極めて重要なものであるゆえに、今回の特措法については、臨時国会の中で(仮にそれが時間的に到底無理な場合には、次の通常国会の場を含めて)
 ①ぜひとも十分な時間をとってご審議いただきたいです。
 それによって、
 ②除斥規定の修正をお願いします。
 ③全ての肝炎患者への恒久対策(治療と生活の支援)の問題について立法府としての附帯決議をお願いします。
 ④そのためにも、原告団の代表の意見聴取をお願いします。
  困難ではあってもこのようは途を求め続けたいということで、原告団は一致しました。
8 議員のみなさんにはこの原告団の思いをご理解いただき、B型肝炎患者らが、心からよかったと思える立法となるように、非常に困難なことであることは重々承知しておりますが、何卒、力添えをお願いしたいと思います。
  よろしくお願いします。


 俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
 ○志度は好い町 乾を受けて 屋島颪(おろし)が そよそよと
 ○土佐は好い国 南を受けて 薩摩嵐が そよそよと
 ○早稲田よい所 目白を受けて 魔風邪恋風 そよそよと