B型肝炎訴訟 大阪期日 国は和解業務の促進を

 昨日(13日)はB型肝炎訴訟裁判があったので、大阪地裁まで行ってきた。原告数も大変増えてきたので、傍聴席は満席。それでも入りきらず原告席に30名ほどが坐ったが、それでもまだまだ足らず傍聴をあきらめた人も10名ほどいたようだ。
 今回は、3人の原告が意見陳述をした。原告番号192番の男性は、妻が劇症肝炎で亡くなり、周囲からは自分が感染元との眼で見られて、大変辛い思いをしていること、慢性肝炎を発症しているが、まだ子どもが自立していない年齢なので大変なこと等を話された。特に、日常の普通の生活では感染しないことを、国はきちんと国民に知らせて欲しいと訴えた。

 原告番号545番で67歳の男性は、1997年にB型肝炎キャリアと診断されて定期的に検査を受けていたが、2001年に人間ドックで肝がんが見つかり切除手術をした。しかし、4年前に再発してまた手術をした。この間、娘に子どもが生まれたが抱きたくても抱けないでいる(勿論普通の生活では感染はしないのだが)辛い気持を語った。そして、今年には三度目の再発。「15年以上にわたる戦いのため、検査費用や入院費用は既に数百万円に及び、もう限界です。」と訴えた。
 この男性の提訴のきっかけは、昨秋みた病院においてあった「B型肝炎訴訟における和解手続」というチラシだった。このことからも理解されるように、患者が身近に見える場所に、このチラシやポスターを置いておくことが必要だと思う。また、病院によってはB型肝炎訴訟のことをきちんと理解していないところも多く、行政や医師会を通じての医療従事者に対する積極的な啓発が必要と考える。

 遺族原告番号548番の女性(息子さんの原告番号は270番)は、「子供にB型肝炎ウイルスを感染させ、26歳の次男を肝臓癌でなくしました。」と語り、「次男の初診の時に主治医から『肝臓癌』と申告された。」という。それでも次男は衰える体力をとりもどそうとリハビリに努めた。「どんなに苦しい状態でも私たちを案じ『こんな身体になってごめんなさい』と言っていた次男ですが、亡くなる一カ月ほど前、病院の消灯時刻の後、『お母ちゃん、手を貸して』と弱々しい声で言ってきました。私が手を出すと力一杯握りしめました。不安で、不安で私の手を求めていたのだと思い、『大丈夫やからね、大丈夫、大丈夫』そう言ってしっかり握りしめてやりました。」と語った。
 母親からの二次感染の彼は、両親や恋人を残して亡くなった。意見陳述したこの母親は、「私が原因で次男を死なせてしまったことに家族に対して本当に心から申し訳なくおもっています。」と語っているが、国の長年の無策が彼女をしてこういう理不尽な立場に追い込んでいる。肝がんが見つかってわずか4カ月後のことであった。
 また彼女は、「国は40年の長きにわたって予防接種の回しうちを放置し続け、被害を拡大しました。基本合意を締結したにも関わらず、和解手続きにも時間をかけ被害者の苦しみを長引かせることは絶対にしないでください。私は10月末に提訴しましたが、約半年たっても、未だに国は私の提出した資料に対して何らの回答をしておらず、裁判がどうなっているのか思わない日はありません。」として、国の対応の遅さを告発している。

 弁護団も、毎回の期日では和解成立の促進を国側に要請している。しかも、4月13日の和解成立はたったの7件。恐るべき遅さ・怠慢と言ってよい。弁護団は「進行に関する意見書」の中で、「基本合意書及び国との実務協議に従い、国に対し、和解資料を整理して提出してきた。その数は、本年2月末までで391件にも上る。さらに4月5日には、73件の和解資料を提出している。これに対して、国からの回答があった件数は、わずか95件にも満たない。昨年11月に提出した資料についてすら、60件もの大量の資料が、未だに何の回答もされないままに放置されるのが常態と化している。」と批判した。

 全国の原告数は現在5,000人ほどいるが、このような状態が放置されれば、和解の日を見ずに亡くなる方が続出するだろう。昨年度13人だった国の審査人員の体制は、現在25人で30人まで増やすと言っているようだが、これからもどんどん増えてくる提訴者に対応するにはこれでもまだまだ足りない。抜本的な国の体制の改善を要求したい。

 裁判が終わった後、原告団総会が開かれた。初めて見る原告も多いが、被害者総数40数万人からみると、ほんの一握りである。再三このブログでも指摘しているが、提訴できる数は被害者総数からみてもわずかである。被害者が安心して治療・生活できる「恒久対策」の重要さが実感させられる。

 大阪の原告団総会では提訴原告の一覧表が示された。それによると以下のとおりであった。

 被害者数   674人(原告数726人)
 死亡      38人
 肝がん    135人
 肝硬変     58人
 慢性肝炎   324人
 キャリア   119人
 和解資料提出 464人
 和解成立    46人
 
 そして、国からのなんらかのコメントが未だに無いのは、1ヶ月以上・84件、2か月以上・78件、3ヵ月以上・75件、4カ月以上・60件、5か月以上2件 であった。
 弁護団が言うには、普通の裁判では2か月も3ヵ月も被告から何の回答もないことはあり得ないとのこと。裁判官から叱責・裁判の促進を言われても当然の状況なのである。

 しっかりせよ!!野田民主党政権!! 昨年6月28日の基本合意と総理官邸での首相の謝罪の精神を守れ!!



我が家の張子面 広島・常石張子 警官



 徳島でのB型肝炎訴訟相談日と原告団会議・交流会
 4月28日(土) 1:30〜3:00 B型肝炎訴訟相談会
         3:00〜5:00 徳島の原告の報告会
                大阪原告の共同代表の小池さんも来ます。
         その後、交流会をします。
  
 是非ご参加ください。 


俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
 ○啼くな鶏 騒ぐな烏 明けりゃお寺の 鐘が鳴る
 ○泣くにや泣かれず 飛んでも行けず 心墨絵の 時鳥(ほととぎす)
 ○名残惜気に 見かえる顔に 露か涙か 朝櫻