B型肝炎で厚労大臣と協議

 昨日(7月11日)は、昨年6月のB型肝炎訴訟原告団弁護団と国との基本合意に基づいた、厚労大臣との協議があったので参加した。各地から160人余りの原告・弁護士が集まり、厚労大臣との協議を行った。会場は70人余りしか入れないため、第2会場を設け大型モニターで視聴参加した人もたくさんいた。それだけ、何とかしたいという原告の思いが伝わるものであった。
 協議は多くの課題があったにもかかわらず1時間という短時間の時間制限ため、事前に出した協議項目の中から以下の5項目に絞って協議がされた。

 ①広報の充実について(有川哲雄・大阪原告団
 ②医療費補助について(高橋朋巳・北海道原告団代表)
 ③医療費助成に係る更新手続きについて(小池真紀子・大阪原告団共同代表)
 ④医療機関における差別偏見について(石川冬美・東京原告団副代表)
 ⑤個別和解の進展(谷口三枝子・全国原告団代表)

 この協議会を成功させB型肝炎対策の前進を図るために、事前に原告団弁護団の協議がされた。北海道の高橋さんは、5回目の肝がん手術を控え、入院中のところを外出許可をもらっての訴えであった。カッコ内が発言者である。

 以下は、私の発言内容である。
1 はじめに
 徳島肝炎の会の会長を務めています有川です。私がB型肝炎ウイルスに感染しているのを知ったのは、今から32年ほど前です。
 感染の発覚を機に、私は徳島肝炎の会を立ち上げました。患者会を結成した当時、徳島県は、肝硬変や肝がんの死亡率は、いつも全国ワースト1・2位を占めていました。今でもあまり変わりません。
2 広報の充実について(ウイルス検査)
 肝硬変・肝がんに進行することを阻止するためには、早期発見・早期治療しかありませんが、B型肝炎は、病状が進行しても自覚症状がなく、気付いたときには手遅れになるケースも多くあります。しかし、ウイルス検査を受ける人はそれほど増えていません。その理由としては,自分がB型肝炎に感染しているかもしれないという理解がないからだと思います。ウイルス検査の必要性の周知を図るためには,まず第1に政府が「集団予防接種の際の注射器等の使い回しによって,ほとんどの国民がB型肝炎に感染している可能性がある」ということを、その責任で広報すべきではないでしょうか。
「肝炎対策の推進に関する基本的な指針」においても「全ての国民が,少なくとも1回は肝炎ウイルス検査を受検する必要がある」とされています。
3 広報の充実(特措法)
 国は、厚生労働省のホームページにB型肝炎に関する救済制度の掲載を行い、各自治体に対しても広報の働きかけを行っている等、救済制度の周知徹底を積極的に行っていると報告されています。しかし、厚生労働省自身が、予防接種によるB型肝炎の感染被害者は45万人いると推計しているにもかかわらず基本合意の成立から1年を経ても、いまだ提訴者数は5000人と極めて少数にとどまっています。これでは、国の救済制度に関する広報活動が功を奏しているとは到底言えません。
4 広報の充実(差別)
 肝炎患者が日常生活において、いわれなき差別偏見を受けたとする被害報告も未だ後を絶ちません。原告団が行った調査でも多くの方が差別を受けていると回答しています。国民全員に正しいB型肝炎に関する知識を普及させることは急務です。
5 まとめ
 被害者全員の救済、そして、感染の原因を問わず全ての感染者が安心して日常生活と治療を受けることが出来る社会づくりのため、①全国民に対するウイルス検査の勧奨、②B型肝炎訴訟に関する救済制度の周知徹底、③国民に対するB型肝炎ウイルスに関する正しい知識の普及、以上三点に関し、テレビや全国紙の利用、さらには生涯教育等も利用した、より質の高い、予算規模を拡大した広報活動を強く推進することを求めます。
 これまで行ってきた広報、今計画している広報についても、効果を検証・報告して原告の意見も踏まえてさらに広報の充実を図って下さい。


 一定の前進面がみられる発言が小宮山厚労大臣からあったものの、私たちの取組を一層広げなければ、この協議で求めた項目についての前進は図られないと感じた。そのためには、被害者の更なる掘り起こしで提訴者を増やすこと、この訴訟では救済されない広範な被害者を含めた救済が図れる恒久対策の実現が必要と感じた。厚労大臣の前向き発言を実行させるのは、原告団弁護団のねばり強い運動でしかないだろう。
 協議の後、厚労省前の日比谷公園で報告集会が開かれたが、私は記者会見に参加したため、残念ながらその様子はわからない。



小宮山厚労大臣


俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
 〇思ひ廻せば 浮世は鏡 笑ひ顔すりゃ 笑ひ顔
 〇昔や縮緬の帯 縮緬襷(たすき) 今ぢゃ縄帯 縄襷
 〇昨日北風 今日南風 明日は浮名の たつみ風