「朝鮮人強制連行」 外村大

朝鮮人強制連行 (岩波新書)

朝鮮人強制連行 (岩波新書)

 以前読んだのは「中国人強制連行」(岩波新書)であった。
 表紙裏の紹介は以下のとおり。
 「本書では、アジア・太平洋戦争時、1939年(昭和14年)9月から1945年8月にかけて行われた戦時労務動員について、その計画の策定過程、無謀な動員の実態、動員の中で日常化した暴力、そして動員体制の崩壊までを基本資料をもとに描き出す。」
 著者は、朝鮮の労務動員の史実を再検討するなかで、必然的に日本人に対する労務動員のあり方についても知り、両者がどのように異なるのか、異ならざるを得なかった日本と朝鮮の条件の相違を理解してゆく。
 アジア・太平洋戦争の泥沼化の中で、日本国内での労働力不足が深刻となり、それが中国人強制連行・朝鮮人強制連行につながってゆく。
 ここでの著者の指摘「朝鮮人労働者の導入や彼らの処遇、社会統合をめぐっては、今日の外国人労働者に対して日本社会に存在するようなものと似通った議論が存在していたことが確認できる。」として、「総力戦としての日中戦争が始まった時点で労働力不足が問題となってきたのは主に炭鉱であり、その原因は他産業よりも労働条件や待遇が劣る点にあった。」と指摘している。
 現在でいえば、清掃・介護・福祉・看護などの産業では人手不足が深刻で外国人労働者が安い賃金で雇用されている。しかも労働基準法があるにも関わらず、多くの事業所で違反が常態化している。
 日本での労働が当時の法律からみても違反だらけ、賃金も約束と違うといった状況が伝わってくる中で、日本への渡航を拒否することは当然である。朝鮮からの労働者の動員計画が予定数を大幅に満たさなくなってきた時、農作業中の朝鮮人を強制的に拉致したりして、厳重な監視の下で多くの朝鮮人農民を日本に送り込んでいる。70万人強の朝鮮人が日本帝国の労務動員計画・国民動員計画で日本内地に配置された。
 著者は、「日本政府はこれまで首相談話などを通じて植民地支配に対する反省の意を表してきた。だが、これまで労務動員政策の中で生じた朝鮮人に対する人権侵害に、国としての責任についての見解を公的に明らかにしたことはない。」と指摘しているが、この点でのけじめをきちんとすることが日朝関係にとって大事であるし、歴史教科書でも明確な記述が必要であると思う。




 我が家の張子面  象・三春張子


俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
〇可愛がられて 又憎まれて 可愛がられた 甲斐も無い
〇可愛がられて がられてがって がつてがられた 事も無い
〇逢はねば逢はぬで 苦労もするが 逢へば逢ふたで 又苦労