「ルポ 良心と義務」 田中伸尚 と 彼岸花

ルポ 良心と義務――「日の丸・君が代」に抗う人びと (岩波新書)

ルポ 良心と義務――「日の丸・君が代」に抗う人びと (岩波新書)

 「日の丸・君が代」に抗う人びと と副題にある。
 国旗国歌法は、わずか2条で成り立っている。今から13年前に成立・施行された。

国旗及び国歌に関する法律
(平成十一年八月十三日法律第百二十七号)
(国旗)
第一条  国旗は、日章旗とする。
2  日章旗の制式は、別記第一のとおりとする。
(国歌)
第二条  国歌は、君が代とする。
2  君が代の歌詞及び楽曲は、別記第二のとおりとする。

 今から20年ほど前、暉峻康隆(てるおか やすたか)という早稲田大学文学部教授で井原西鶴研究者が、岩波ブックレットから「日の丸・君が代の成り立ち」という本を出していて読んだことがある。暉峻康隆先生の授業を受けたことはあるが、近世文学にはとんと興味がなかったため、「可」かよくて「良」だっただろう。

 岩波書店の紹介は、以下のとおりであった。
 「日の丸・君が代」についての議論や悩みがつづく。しかしその前にまず「日の丸・君が代」の正確な起源・変遷について知ることが大切だ。国文学者による綿密な考証は、誰でもがこれだけは知っておきたい基本知識を提供。
 
 歴史的経過は暉峻先生のとおりかもしれないが、私にしてみればこれらが国旗・国歌にふさわしいかということである。

 この法律が国会で論議された時、当時首相であった小渕恵三は、1999年6月29日の衆議院本会議において、日本共産党志位和夫の質問に対し以下の通り答弁した。

「学校におきまして、学習指導要領に基づき、国旗・国歌について児童生徒を指導すべき責務を負っており、学校におけるこのような国旗・国歌の指導は、国民として必要な基礎的、基本的な内容を身につけることを目的として行われておるものでありまして、子供たちの良心の自由を制約しようというものでないと考えております。」
「国旗及び国歌の強制についてお尋ねがありましたが、政府といたしましては、国旗・国歌の法制化に当たり、国旗の掲揚に関し義務づけなどを行うことは考えておりません。したがって、現行の運用に変更が生ずることにはならないと考えております。」

 ところが現在の実態といえば、全くこの答弁に反する強制が行われている。私の家の前には小学校、裏には高校があるが、運動会の練習や文化祭の時など「君が代」が大きな音でスピーカーから聞こえてくる。
 「ルポ 良心と義務」は、大阪府や東京都などで突出して強制され罰則まである今の状況に抗い、良心の自由を求める人びとの声がえがかれている。
 橋下大阪市長が作った「君が代」強制条例について、著者の田中から取材を受けた井前弘幸はこう評価している。
 「トップエリートを日本人のできる層が押え、優秀な外国人労働者を中間層に置き、できない下層の日本人については自己責任を徹底させる。しかし教育がその気にならなければ、トップエリートは育てられない、そのためには、言いなりになる教員を作っていかねばならない。政治が教育を支配しないとできない。その際に、トップエリートと下層の日本人がばらけないような国家イデオロギーの核となるのが要る。それが『日の丸・君が代』強制の担っている役割ではないでしょうか。」

 私の家には、勿論「日の丸」はない。「君が代」が演奏される行事の時には起立もしないし歌いもしない。


 我が家の庭にある彼岸花が咲き始めた。家の周りの田んぼもほとんど稲刈りが終わり畦道には彼岸花が群立している。暑い夏がようやく終わり、秋の到来を彼岸花が告げている。

 万葉集にある柿本人麻呂の歌。
 「道の辺(へ)の 壱師の花の いちしろく 人皆(ひとみな)知りぬ 我(あ)が 恋妻を」

 路のほとりに咲く壱師の花のように、はっきりと人はみんな知ってしまった。私のいとしい人を。

 「壱師の花」の花は彼岸花を指すようだ。彼岸花は、全草有毒な多年生の球根性植物だが、曼珠沙華などいう別名は法華経などの仏典に由来して、気品がある別名だ。 しかし以下の別名は不気味である。死人花(しびとばな)、地獄花(じごくばな)、幽霊花(ゆうれいばな)、剃刀花(かみそりばな)、狐花(きつねばな)、捨子花(すてごばな)、はっかけばばあ
 中国語では一般的には「石蒜」(shi suan)と呼んでいるようだが、「烏蒜,龍爪花,山烏毒,新米夜飯花,義八花,老鴉蒜,蒜頭花,水麻,壱枝箭,蒜頭草,紅花石蒜,鬼蒜,蟑螂花(ゴキブリ花),红花石蒜, 银锁匙(銀のカギ),毒蒜(ドクニンニク),彼此岸花,秃蒜,月月红,野蒜,一支箭〔江西〕,赤色箭,寒心花,蒜头草,避蛇生[湖北]」という別名もあった。




我が家の張子面  大黒



俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
〇お大尽衆は 太鼓を叩く 私や貧乏で 鍋叩く
〇風が笛吹けや 木の葉が踊る 狸浮かれて 腹鼓
〇鬼が餅搗きや 閻魔が捏(こ)ねる 傍でお地蔵が 嘗(な)めたがる