「絵馬と信仰」 筑波書林

 「絵馬と信仰」(筑波書林)は、我が家には絵馬がかなりあるので、今年1月に東京に行った時、池袋にあるジュンク堂書店で見つけたので購入した。奥付を見ると1990年5月30日発行とあった。ジュンク堂の地方出版図書のコーナーにあったものだ。
 インターネットで筑波書林を検索してみると、下記のような記載があった。
「筑波書林は主に茨城県内の歴史・地理・民俗・文学・自然をテーマに、広汎な出版活動を続けています。
 平成5年3月に目標の500冊完結をはたした『ふるさと文庫・茨城』は、「庶民の立場で記録・郷土の歴史と文化に光」と、県内外から商い評価を受けております。
 私たちは、地域を見つめ考え、地域を越えて、より多くの方々に価値ある出版物をお届けする事を使命と考えております。」

 地方の出版社でコツコツと地域の文化の掘り起こしを続けていることには、感心させられる。
 著者の今瀬文也(1933年生)は、日本民族学会評議員、茨城民俗学常任理事と紹介されていた。新書版で79頁のこの小冊子、茨城県を中心に採集した絵馬の紹介をしている。馬は一般に農耕用、運搬用として農家で使われてきたが、一方では昔から神は馬に乗って人の世に降臨すると考えられてきた。
 そして、祈願の時には生馬を献上してきたのが、馬形のものを献上するようになって、絵馬が誕生したと著者は解説している。
 絵馬は初めは神にのみ献上されるものであったが、平安時代末期になると神仏習合思想の発展によって、仏様にも絵馬が献上されるようになったとも解説している。

 蔵書の中から、絵馬に関する本を探してみた。
 〇「近江の絵馬」 大津市歴史博物館 1991年8月 これは博物館の展示図録。ここでは、現存する最古の絵馬は、平城京跡から出土した奈良時代のものと紹介されていた。カラー写真もふんだんにあって楽しい一冊である。
 〇「絵馬に願いを」 岩井宏實 二玄社 2007年9月 この本もカラー写真が盛りだくさんである。巻末には、「全国社寺御利益案内」というのがあった。
 私が住む徳島県では、四国霊場札所の薬王寺切幡寺が厄除け、日の峰神社が歯痛、で紹介されていた。

 
 

 
 絵馬に託す願い事は多種多様であり、したがって描かれる絵も多種多様である。私は、絵馬は買うが願い事はしない。




我が家の絵馬 東京・根津神社  2012年7月7日購入



俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
〇死んで行く時や 如来様たより 娑婆にゐる時や 親たより
〇他人恐ろし 闇夜は怖い 親と月夜は 始終(いつ)も好い
〇月よ日と 親と子供と 馴染みと鏡 何時も見立てて 目に厭きぬ