風刺漫画で読み解く「日本統治下の台湾」

日本統治下の台湾 (平凡社新書)

日本統治下の台湾 (平凡社新書)

 本の帯には「『大椀』で描かれた矛盾と軋轢」とあった。台湾で初めて新聞風刺漫画を描いた画家国島水馬について書かれている。
 私が読んだ台湾関係の本は余りにも少ない。一番古いのが(とは言っても全て数十年前に読んだものばかりだが)「知られざる台湾」台湾独立運動家の叫び (林景明 三省堂新書 1969年)であった。
 それ以外では直ぐには思い出せないが、ゾルゲ事件で刑死した尾崎秀実と異母弟の尾崎秀樹。父親が台湾で仕事していたため、植民地下の台湾で住んでいた。読んだのは、以下の本。

 現代支那論  尾崎秀実   岩波書店
 尾崎秀実時評集  尾崎秀実   平凡社
 愛情はふる星のごとく  尾崎秀実   青木書店
 近代文学の傷痕  尾崎秀樹   普通社
 上海1930年  尾崎秀樹   岩波書店
 中国志を旅する  尾崎秀樹   あかね書房
 魯迅との対話  尾崎秀樹   南北社
 ゾルゲ事件  尾崎秀樹   中央公論社
 生きているユダ  尾崎秀樹   角川書店
 新しい中国の顔  尾崎秀樹   講談社

 どうも本書、あとがきで「台湾という初めての植民地統治を日本人はうまくできなかったのではないかとも感じた。右往左往しているうちに終わったというのが事実ではないか」と語り、台湾統治を肯定的にとらえているようだが、それはどうか。かつて「知られざる台湾」台湾独立運動家の叫び を読んだ私にはそうは思えない。
 果たしてうまく統治できる条件などあったのだろうか。インフラ整備なども勿論台湾のためではなく、日本の海外侵略・アジア支配のための必要なものだったというのが私の認識である。
 「知られざる台湾」には日本政府・台湾総督府の過酷な収奪・弾圧が書かれている。林景明は本なかで「台湾統治誌」の資料として「住民一人当たりの財政負担」比較として1904年をあげているが、そこでは日本では3,343円なのに対し、台湾は4,554円となっている。所得が明らかに低い台湾が財政負担が多いのであった。「植民地統治を日本人はうまくできなかったのではないか」ではなく、植民地支配そのものがうまくいくはずがないのである。
 また、「松井岩根(元台湾軍司令官)は、東京裁判南京大虐殺の責任者として冤罪ともいわれる有罪判決を受け、粛々と死刑を受けている。」と書いたが、果たしてそうなのが、大いに疑問である。

 気になったのが風刺漫画で読み解く「日本統治下の台湾」、明らかな校正ミスがあることだ。149P「陳水扁台北市長」は「陳水扁台北市長」、160P「石鹸潜在メ―カ―」は「石鹸洗剤メーカー」ではないか。天下の平凡社がこれでは困る。




我が家の絵馬 茨城・常磐神社



どどいつ入門(中道風迅洞 1986年 徳間書店
○おもいつく羽根 風からそれて 今はせつない ことばかり
○あえば笑うて 別れにゃ泣いて うわさ聞いては はら立てる
○妻と思うて いる身が主に 文を変え名で 書くつらさ