「江戸暦・江戸暮らし」 木村吉隆

江戸暦 江戸暮らし

江戸暦 江戸暮らし

 以前、浅草に行ったら手拭専門店の「染の安坊」と「ふじ屋」に立ち寄ると書いたが、もう一つのぞくのが「助六」である。
 ここは、本書のカバー裏に書いている紹介によると「浅草は仲見世、観音さまの宝蔵門近く日本で唯一の江戸趣味小玩具の店『助六』。間口一間の小さな店には、江戸の風情や風流をいまに伝える、三千点ほどの小玩具が並んでいます。」
 著者は2011年12月に同じ亜紀書房から「江戸の縁起物 浅草仲見世 助六物語」を出版している。これについては2012年2月18日のブログで紹介した。そして、助六で購入した「とんだりはねたり」(1989年)とお雛様もアップした。最近では助六は立ち寄るが何せ私の財布にとっては高価なので、玩具は見るだけにしている。「江戸暦・江戸暮らし」は店先にあったので購入した。


とんだりはねたり 1989年購入

 10cm足らずの小さな玩具を見ていると、心が和む。江戸の様子が玩具から伝わってくるのだが、著者の木村さんと話していると、そこからもまた江戸のよさが伝わってくる感じがする。アメリカや東南アジア、中国などから来ている沢山の外国人が行き交っている浅草ではあるが、江戸らしい雰囲気が残っているのだろう。
 季節の風物詩がよく分かる人形たちが紹介されている。江戸では物売りが多くいたが、服装や売り声もそれぞれに特徴がある。助六には20人ほどの職人がいて、これらの玩具を作っているのだそうだが、手間暇をかけて念入りに仕上げられている。初鰹売りの人形もあったが、本書でかつおを「刺身にして辛子味噌をつけて食す。」とあった。まだこういう食べ方をしたことが何ので、試してみるか。
 面白かったのはあとがきのこの一文。「最近では『これは手作りなので、ひとつひとつ顔や形が違います』などという輩もおりますが、大変失礼を承知でいうならばそれはエセ職人です。プロの職人仕事に徹するというのは、同じ質の物をたくさん作ることができるということです。」職人の技と腕に惚れ込んでいる著者の面目躍如とでも言うべき言葉であろう。



我が家の郷土玩具  御神馬 いせそう  1989年11月1日購入



どどいつ入門(中道風迅洞 1986年 徳間書店
○他所の花 羨むばかりやじやそりや気が弱い
    與我自由否与死
    熱血染出十三州
 羨ましけりや咲くがよい
○長い日照りの専制主義も やがて自由の雨が降る
○民のうるはふ自由の雨を 誰が束縛するやらん
 詩入りのどどいつもある。この時期の明治の都都逸を読んでいると、特定機密保護法を揶揄しているようにも思えるから不思議である。