松崎慧詩集「山里の変貌」とバイクのパンク

 朝、用事があって役場支所までバイクで出かけたのだが、家を出てしばらくするとハンドルがぶれて危なくなってきた。どうしたのかと見ると、タイヤの空気がなくなっている。仕方なく家までバイクを押して戻って、車で再度出かけて用事を済ませた。
 バイクをそのままにしておくわけにいかないので、1キロあまりはなれたガソリンスタンドまで行った。とは言え、楽なものではない。タイヤの空気の抜けたバイクを押すのはひと苦労だ。その上、少し上り坂になっている。ガソリンスタンドでは空気を入れては貰ったが、パンクの修理はしていないと言う。仕方が無いので、吉野川の向こうの吉野川市バイク屋さんまで行くことにした。ひやひやものである。再度空気が抜けて、長い橋の途中で立ち往生したら、泣くに泣けない。それでもようやくバイク屋さんに無事にたどり着くことができた。バイク屋の言うには何ヶ月も空気を入れないと、空気が抜けてしまうことがあると。調べてみると、小さな穴が開いていた。修理代は2,700円であったが、相場を私は知らない。

 松崎慧さんは元中学校の国語教師である。連れ合いが中学校のときの担任だったから、その付き合いは50年余り。私も40年余り前から知っている。小説や詩を書き、徳島作家という同人誌もやっていたから、本格的である。今までにも、何冊か著書を頂いている。徳島新聞の文化欄にも時々文章が載っている。詩人の野上彰は徳島出身だが、野上の詩碑の建設にも力を注いでいた。

 あとがきには以下のように書いている。
 「『OGORO』という同人詩誌に参加していた。1996年1月から2004年11月までの10年間。主宰は『詩人会議』会員の立川千年だった。『オゴロ』は徳島の方言でモグラ土竜)のことである。モグラから思い浮かんでくるイメージは、土着性の濃い無名者の生活態度であり、思想である。(中略)『山里の変貌』は『OGORO』創刊より終刊19号まで、毎号1編を発表していたのだが、その19編を集めてこの小詩集に収録した。」
 オゴロがモグラのことを言う徳島方言だということを初めて知った。いくつかの国語辞典で調べてみると、載っていない。ネットで調べてみたら、大阪や愛媛でもあるようだから、徳島だけの方言ではないようだ。
 詩集には、「山里の変貌」だけでなく、他に16編も収録されている。山里の変貌は、松崎さんが愛した美馬市穴吹町の山間地(母親の出里であろうか)に住んでいた懐かしい人々との交流が描かれ、時代の推移とともに人・風景がどんどん変わってゆく(集落として崩壊してゆく)様子が愛惜をこめて表現されている。住民たちは、ほとんど自給自足のような生活を送っている。少し長いが1つだけ紹介する。

  愛三じいさんのいた日々

 軒下の濡れ縁に腰をかけて
 白木蓮の花を見ながら 
 煙草を吸うていた
 庭先の竹林の向こうでうぐいすが鳴いていた

 
 さくらの花びらが舞い散る中に立って
 一服ふかしながら山の斜面の畑を眺めていた
 そろそろ金時豆を播かねばとでもおもっていたのだろうか
 

 立夏のころには新茶の葉を摘み
 入梅前にはじゃがいもを掘っていた
 家の一段下の菜畑では
 きゅうりやなすを作っていた
 夏の長い日の午後は
 自家製の番茶を飲みながら一服していた
 縁先で猫と並んで昼寝をしているときもあった


 もう五、六年程も前の
 春から夏にかけてのことである
 その年の秋の終わりのころ
 じいさんは風邪をこじらせて寝込み
 年の暮れに肺炎で死んでしまった
 山の畑に播いた蕎麦の刈り取りもせずに


 白い花がさびしそうに咲いていたと
 ふもとに住んでいる友人が
 電話で知らせてくれた




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どどいつ入門(中道風迅洞 1986年 徳間書店
○どこに打とうか口説きの王手 しやくな飛車角横にや金
○涙出すくせなおつた今じや ツノ出すくせの山の神
○はなれてすわつて鳴いてる秋の 虫をきいてる恋もある


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